本日三本立!チェコアニメ/絵本/奥州安達原

長い一日でした。本日ダブル、いやトリプルヘッダーか?色々と見てきました。
いつものように、のんべんだらりと書きましょう。


ではいくぞ<午前の部> チェコアニメ上映会@三鷹市芸術文化センター
ミレルの『もぐらくんシリーズ』2本、アンデルセン原作の『豚飼い王子』、
それからイジートルンカを3本。
初見の『もぐらくん』はとてもいい色合いでした。お話も面白いんだけど
とにかくディテールの描き込みの細かさと、チェコニカラーと呼びたい独特のポップさが
あふれる色使いは最高!もぐらくんのキャラクターはちょっとファンシーなのに
ひとこまたりとも退屈させない、とてもつぼを得た演出と画面構成。よかったです。
『豚飼い王子』はチェコ人形ファンタジーだけど、子供向けとは思えない大胆なシニカルさ。
プライドが高く自分のルックスやステイタスにしか興味がない王女が、しっぺ返しですべてを失う、
という…びっくりしました。イジートルンカは『動物たちと山賊』『2つの霜』『善良な兵士
シュヴェイク』どれも微妙でした。手書きアニメと人形アニメの合成とかやってるんだけどね、微妙でした。


<午後の部> 世界の絵本がやってきた―ブラティスラヴァ世界絵本原画展
引き続き三鷹、こんどは駅ビルにある三鷹市美術ギャラリーへ。
午前の部の上映会は、この展覧会の関連企画だったのね。
スロヴァキア共和国のブラティスラヴァで行われる、世界最大規模の絵本原画展が日本に上陸!
ってわけなんです。おまけに日本の絵本作家や、チェコ絵本史に燦然と輝く名画も大量空輸!
すごいです。これ3/11までやってますから、ぜひ足を運んでみてください。
とにかくね、展示数がすごい!こんなに三鷹市美術ギャラリーが大きいとは…じゃなくて
絵本原画ってこれ、完全に絵画展なんですね。ひとつひとつが芸術作品、絵画、アート。
ちょっと驚いた。絵本って映像に近いメディアだと思うんだけど、現代美術のひとつでもあるなあと
思いました。おどろきの発見だな。
絵本はこどものものではあるが、芸術なんだぁ!私は画集に向き合うような気持ちで、置いてある絵本
(展示作品が載ったもの)を手にとって見た。
原画を見た後だと、ちいさく収まった印刷物には、展示された絵画のちからとはまた違った面白さがあって
現代美術のパフォーマンス的な側面というか、こう収まってひとつのアートが成立する・・・という感じで。
美術の画集よりもっと、それ自体がアートしてる。大竹伸朗の10万円アート箱、みたいなものなんだな。
とわくわくしてしまった!イジートルンカの絵本がたいへん素晴らしかった。これ↓

こえにだしてよみましょう

こえにだしてよみましょう

かなり完璧な芸術作品、必見です!日本語のフォントもいいですねぇ。
絵本に対する価値観ががらりと変わった午後でした。


<夜の部> ク・ナウカ「奥州安達原」@文化学園体育館特設舞台
今宵は新宿、いや奥州へ赴きました。
この公演で活動を休止する、ク・ナウカの舞台を観に行った。
主宰の宮城總さんが、静岡の劇場の芸術監督に就任されるそうで・・・
ク・ナウカの舞台は、演劇というよりもそんな定義を超えちゃってる、なんだろう?あれは、なんだ??
お芝居は演技する人と、演技する声の人が二人一組でひとつの役柄を演じる、という人力人形浄瑠璃形式。
そこに演奏者の音楽と歌声が加わってきて、お囃子がとんでもない一体感を生む「ええじゃないか」状態で幕切れ。
頭真っ白になる。ものすごいものを観てしまった・・・と呆然とする。
緻密で繊細な美意識を、生の状態で置き、その場で焼く。燃やす。芸術の情熱と美が剥き出しに煙って溢れてる。
なんだか、わかんないね?ごめんなさいね。これは観なけりゃわかんないよな。。とにかくものすごい芸術ってわけね。


お題目は近松半二の人形浄瑠璃「奥州安達原」
平安時代、奥州を支配していた安倍頼時がおこした『前九年の役
源頼義・義家の軍に破れ、死んだ頼時の息子たち(貞任と宗任)が水面下で復讐を企んでいた頃のお話。
時代物浄瑠璃エンターテイメントの台本から、鬼女伝説のお話「ひとつ屋の段」を取り上げて舞台化してる。
奥州は現在の福島県あたり、鬼女、いわゆる山姥が住む一軒屋があって、旅人を泊めてはその肉を食うという
伝承が残っている。それを潤色して台本に取り入れた。あらすじ読んだけどスゴイ話なんだよ、超ドラマチック。
うわさの鬼女は、じつは安倍頼時の妻だった・・・とか
旅人として泊まった妊婦を、胎児の血欲しさに殺しちゃうんだけど、妊婦は実の娘だった・・・とか。
史実ではないフィクションの世界だけど、劇的だよね。とてもトリッキーで入り組んでいて、史実と伝説をミックスして。
こんな作品が240年も前に、書かれて上映されてるなんて、もうまいっちゃうよ!


ク・ナウカの「奥州安達原」は、鬼女の身投げでは終わらなかった。
正直、よく覚えてないんだ。最後の最後、どんなストーリーテリングで終わったのか。
原作では、鬼女・安倍頼時の妻は、源家に包囲されて絶体絶命、しかも娘を殺したって絶望して谷へ身投げ、
すると谷底には息子・貞任の軍が控えている。でも源VS安倍の戦いにはならず、貞任は宗任を見逃してくれた源義家への
返礼として、奪った宝剣を源家に返し「戦場でまた会おう」と誓って別れる。のだそうだ。
私がみたエンディングは、谷底で降って沸いた祝祭で、それはク・ナウカの使命をうたった歌だと思った。
埋もれていく時間と、生きていた人々と、彼らの物語と渦巻いた感情と、出来事、時の経過が水に流してしまうものを
「伝えよう」と宣言しながら歌い踊っているのです。パーカッションとお囃子が会場中に満ちて、どこまでも。
いやぁ・・・。目の前の光景が信じられなかったな。本当に美しかった。凄いカタルシスだった。


実はちょうど今、柳田国男の「日本の伝説」を読んでいたところで、時代や伝承の世界観が近いから
余韻をたのしむつもりで、帰りの電車の中でぱらぱら読んでいると・・・うわー。
さっそくでてきたよぉー本日登場した鎌倉権五郎景政の伝承話が。やっぱ柳田先生はすげいなぁ・・・。
偶然とはいえ、ちょっとした巡り合いを感じたのでした。
しかしこの本むちゃくちゃ面白い↓こんな日本へダイブせよ!
日本の伝説 (角川文庫)

日本の伝説 (角川文庫)



私信:いとしのてらちゃんへ
わたしは今夜、とても久し振りに見た、きみの相変わらずの佇まいにちょっと涙がでそうになったよ。
あんなに時間が経ってるのに、てらちゃんは何も変わってない!
ずっと前から綺麗な人だった。そのまんまだった、今夜も。
そうかあの頃から、きみは自由に、思うにまかせて、時間と思考と空間を泳いでたんだ、と今夜わかった。
告白しよう。きみは私の憧れの女性なのだ。ずっとね。
すっと舞台に立っているきみを、私は勝手に、とても誇らしく思いながら見てた。
大きな声で「てらちゃん!」と叫んで手を振りたいくらいだったよ。まあ舞台とはいえ歌舞伎じゃないんだから
そんな場違いなことできなかったけども。。
また会おう。ていうか会いにいくよ!!!