2046:酩酊状態の希望

映画「2046」を観ました@渋東シネタワー。
文字だけの予告編をシネマライズで見たのは、何年前だったかな?
木村拓哉×ウォン・カーウァイ って文字だけで。「特報」だと思った。
今思えば、かなりフライング的な予告編だったよなあ・・・。


「2046」はとてもいい映画だと思う。
ウォン・カーウァイは、筋も無く即興撮影だとか、段取りが悪くて木村拓哉リタイア
とか、そんな裏側のゴシップが取り沙汰されることが多い。
そんなことはどうでもいいのだ。ただ、素直に出来たものを見ればよい。
どんな映画監督も、「ひとつの伝えたいこと」から映画作りが始まる。


同じトニー・レオンが物書き役の「花様年華」は近い世界で引き合いに出されるけれど、
「2046」は、もっともっと酩酊状態にあるような、支離滅裂な感じだ。
そう感じるのは、小説の世界がSFで、その世界に現実の登場人物が出てくるからかな。
記憶と現在と、小説という妄想と。それが流れるように行き来する。
ある意味ロードムービー的で、それは実際の旅でなく魂が旅をしてる感じ。
その終着点か通過点で、ひとつの真実に出会う。私はどちらかというと「ブエノスアイレス」に近い感じをおぼえた。あれほどのポジティブ感はないけれど。
ブエノスアイレス」は本当に好きな映画だ。だめになった時に何度も助けられた。


役者はみんな魅力的だったけど、フェイ・ウォンの佇まいには参ったな〜。美しい。
普通ならマギー・チャンがやりそうな役だけど、マギーさんはこれまた驚くような
風体で出てくる。プラスチックな役柄が、こんなにはまるなんて思わなかった。
木村拓哉は、トニー・レオンの分身として、二つの顔をよく演じてたと思う。
それで相変わらずチャン・チェンの化けっぷりには驚かされた。
う〜ん、未だにチャン・チェンの正体がわからん・・・。


今、ポール・オースターの「True Stories」を読んでいるところで
その中に「その日暮らし」という彼の自伝エッセイがあって、
これを読むと「2046」の小説家は彼の友人なんじゃないか、という気がしてくる。
なんとなく、そういう近しい感じがする。


トゥルー・ストーリーズ