パトレイバー、東京

押井守監督の『機動警察パトレイバー2 the movie』を観る。
私はパトレイバーについて無知識だし、その詳しいところは語れないのだけど
極私的にこの映画がとても好きだと思った。


冒頭、東京の街が壊れる。私は漫然と、静かに傷つきました。
これは、9・11の映像を見たときのような感覚とよく似ている。
あのニュースと、このアニメーションは、私に同等のショックを与えた。
実写の「ゴジラ」で東京が滅茶苦茶に破壊されても、何とも思わないのに
アニメの「パトレイバー」で壊れゆく東京を見たら、まるで針のむしろにされたような
痛みを感じる。
東京の街の壊滅風景は、むしろよくある映像であって、見慣れているはずなのに。
リアルな映像でもそうでなくても、結局はゲームの世界と同じ。
リアリティを伴っていなければ・・・。


東京が壊れるリアリティを、なぜ感じてしまったか?
それは映像のタイプ、アニメとか実写とかCG・・・とはまったく関連のないところで
つまりそれが「東京の橋が壊される」風景だったから。


私は、隅田川神田川多摩川、荒川・・・架かる数々の橋も大好きだ。
それから、橋が壊れたら交通にダメージを与え、大変な混乱を招く。
でもそれだけじゃない。
「橋」は架け橋で、都市の中のコミュニケーション、繋ぎ目だ。
これが壊れてしまうと、かろうじてバランスをとって成立してた「東京」が、
バラバラになって取り返しのつかないほど壊滅してしまうかもしれない。


9・11で世界貿易センタービルが破壊されたことと同じなのだ。
街を統一するシンボルが、めちゃくちゃにされる恐怖。
物理的によりも精神的な痛みの方が、圧倒的に強い。
「正義の戦争」の原因は日常的な「不正義の平和」であって
正義の平和が日常なら、戦争は起こらない、とこの映画は言っている。


でもこの映画をもっともいとおしく感じる核の部分は、
マーティン・スコセッシの『救命士』にとても近い、美しさだ。
『救命士』にこんな素晴らしいシーンがある。
瀕死のドラッグの売人が、ビルのベランダから落ちそうになりながら
ニューヨークの街並みを見下ろして(まさに貿易センタービルを背景に)言う。
「見ろよ、美しい!俺はこの街が大好きだ!」
パトレイバー2はそういう映画だと思う。
なんのこっちゃわからん人は、どちらかを観ていないんでしょうから観ましょう
(勝手だな・・。)


そういえば六本木ヒルズのオープンで上映した『東京静脈』って
神田川の船上の映像と、ま俯瞰の東京の映像で出来てる作品だと聞きました。
観てないけど、感覚としてパトレイバー2の実写イメージフィルムのような感じ?
今度六本木ヒルズに行ったらDVD(ここでしか入手できないのね)買ってこよと
心に決めました。押井さんも川好きなのかな。

機動警察パトレイバー2 the Movie [DVD]

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