西瓜糖の日々

ゆっくり時間をかけて、ちょっとずつ読みすすめていた本の話。
リチャード・ブローディガンの「西瓜糖の日々」を読み終えました。


この本に出てくる世界は、西瓜糖(スイカ糖)で出来ている。
どんな世界?って、描写から見える世界は、とても不思議で美しい。
西瓜と水とガラス細工のように繊細な風景。


西瓜糖の世界で暮らす人々のお話は、ムーミン谷のように穏やかで
ただ、輝く光と静謐なブルー…喪失と再生の風景が、つねに日常にあるのだ。
おとぎ話や童話のような出来事が、ぽつりぽつりとつぶやくように短く記される。


『行間を読む』てよく言うけど、この本は行間も何もかも一つの世界に
(たぶん西瓜糖に)包まれていて、とてもパッパと読み飛ばせない。
読んでいると魔法にかかるような、不思議な本なんだ。


たとえば、虎と鱒が象徴的に現われる。
…虎は人を食べながら「ほんとに、すまない」と謝る
…さいごの虎を焼いた場所に、鱒の孵化場が作られる
…「堂々たる長老鱒」が主人公をじっと見ている
どんなメタファーか、解釈本を読みたい位、様々なキーが出てくる。
つき抜けてるほど素朴な言葉が重なり、深い深い深層的世界を造っている。


すごい本でした。
まだあと何回も読み返すと思う、間違いなく。
それで毎回、時間をかけてちょっとずつ読むんだろう。きっと。


西瓜糖の日々 (河出文庫)

西瓜糖の日々 (河出文庫)