騎馬オペラ・ジンガロ@木場公園ジンガロ特設シアター

akk2005-05-03

騎馬オペラ ジンガロ「ルンタ」を観てきました。
http://www.zingaro.jp/
入場してすぐ、異空間に吸い込まれて、あぜんとした。
響きわたる僧侶の読経の声、お香の匂い。
ステージを囲んで祈りを捧げる人々。
なんだろう、これ…。私はどこに来ちゃったんだろう?
場内アナウンスが流れる。
チベット僧の祈祷に敬意を表し、上演中の拍手はお控えください』
今回の演目「ルンタ」はチベット語で『風の馬』を意味する言葉。
チベット人が馬に乗って、高原を駆け抜けるイメージとはまったく離れていて
舞台はサーカスのように円形で、薄暗い。


騎馬オペラ。
歌うのかな?と思っていた。馬術の披露だけじゃないんだよね?
でも出演者は誰も歌わないし、台詞も無い。
言ってみれば、歌は『チベット僧の祈祷の儀式』そのもので、つまりこの舞台は
チベット僧の読経の声や楽器の音と共に繰り広げられる『オペラ』だった。
馬の演技は、アクロバティックに走ったり、複雑なギャロップの披露だけでなく
僧侶を囲んで静かに佇むだけの演技や、崩れるように倒れて死を表現する芝居。
静寂をも演じている。
馬たちは、何を考えながら演技しているんだろう?
あの薄暗闇や、テントの光のなか、チベット僧の祈祷の渦を聴きながら。


まるで、ルネッサンスの絵画が動いているようだった。
馬の演技や役者の舞踏、見事な馬術は異様な美意識に彩られて、感覚に訴える。
考え抜かれた舞台装置、めくるめく視覚体験、誰もをひとめで引き込む芸術。
「拍手禁止令」にも関わらず、思わず拍手が起こる場面がいくつもあった。
馬術を洗練したファッションに高めたエルメスが、バックアップするのも当然だ。


ジンガロの主宰者バルタバスは、映画「ジュリコー・マゼッパ伝説」の監督で
カンヌ映画祭の最優秀芸術貢献賞を受賞している。
この映画、実は公開当時に観ました。いつかのお正月、映画初めだった。
とにかく馬。馬しか記憶にない。馬と人と、奇妙な静けさ。強烈で美しかった。
その印象、今日の舞台とまるで同じ!そっくり同じなのです。
この強い深い美意識を表現する力は、念力といってもいい。神がかっている。
バルタバスは出生経歴まるで謎、というミステリアスな存在だけど
バルタバスは馬小屋で生まれたとか、サーカス出身と聞いても何の違和感もない。
むしろそうであってほしい。馬に育てられたとか…。絶対、馬と話せると思う。
すでに全公演売り切れということで、観られない人はぜひDVDで体験して下さい。

騎馬オペラ・ジンガロ / ルンタ [DVD]

騎馬オペラ・ジンガロ / ルンタ [DVD]

きょうのクマ ムッシュ・フランス
  
ジンガロの熱狂冷めやらぬ今日は、ジンガロの産地フランスのクマです。
トリコロールにムーランルージュエッフェル塔…とパリジャン満開です。
ジンガロのイメージとは似ても似つかないなあ。
ルネッサンス篇も作ってほしいですね、バルタバスの絵で。なんって。