偉大なるロックンロール詐欺

セックスピストルズの「グレイト・ロックンロール・スウィンドル」を観た。
嫌いじゃないです、この映画。とてもイギリスっぽい映画だ。
『セックスピストルズ』というノンフィクションをめぐるフィクションの世界。
誰にしろ、ミュージシャンといえばその音楽にしか興味がない私には
セックス・ピストルズの私生活やイメージ戦略なんてどうでも良いんだけど
この映画は私生活を『演技』することや、誰もやらなかった行為を『演技』する
あくまで素で演じる彼らが、虚構の帝国を創りだし、一儲けしてワッハッハ
と更に虚構の演者の目線でみて笑う、というマトリヨーシカみたいな映画だ。
合わせ鏡が無限に同じものを映し出すように、ピストルズの正体が
虚構の中にエンドレスで消えていくようだ。


しかし。
本当の姿は最後に、シド・ヴィシャスがばかみたいに歌う『マイ・ウェイ』に
現われてみえた。急に泣けたんだ。
ただわが道を行くっていう内容の歌を、あの人が歌ったからじゃない。
そこに音楽があったからだ。
フランスの歌謡ショーで『マイ・ウェイ』を歌うシド、
ブルジョワ階級のおじさんおばさんが大げさに感動にふるえる。
シドは歌い終わるとブルジョワ達を次々殺してしまう。
こんな皮肉たっぷりの虚構で覆っても、きみのソウルは隠せなかったよ、シド。
こんなこと書いたら、ピストルズ信者に笑われちゃうかな?
笑いたかったら笑って。私は彼らの音楽にしか興味が無い。


スコセッシが『グッドフェローズ』の最後にこの曲を使ったのは
きっと、同じようにこの音楽に、馬鹿げたソウルを感じたからだと
思うのです。したたかで不恰好で、強い力を。きっとね!

The Great Rock’n’Roll Swindle [DVD]

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