Today#22 タクシーのレジスタンス活動

うっかり終電で、最寄り駅まで帰れなくなった。
あぁ、やっちゃった・・・。仕事もなにもかもが中途半端・・・。きょうのダメダメぶりにぐったりしながら
恵比寿からタクシーに乗った。


運転手は在日中国人だった。あの独特のなまりで、こんな時間まで仕事なんて体を壊すヨ、
とか、全身の血の巡りが滞ると頭も悪くなるとか、健康についての辛らつな話を、色々と。
うん、そうだね。わかってるんだ、でも仕方ないんだよね、忙しい時はさ。
相手がカタコトで敬語じゃないから、私もつい敬語を使わなくなった。
でもご飯食べると元気になるよ。健康。
アァ、ご飯、いいね!と運転手は言って、すこし沈黙した。


−お客さんと話すと元気になるよ。ひとりでずっと黙ってると、つらいから。
いつも、つらいの?
−今は楽しいネ。
あはは、よかったじゃん。


降りるとき、運転手は唐突に、一枚のチラシを私に渡した。気功教室のチラシだって、つい笑った。
私がやっている気功、絶対に良いからぜひやってみて。絶対に。
うん、見ておくよ。と言うと、運転手はしっかり私の目を見ていった。
見て、読んで。


家でチラシを出してみた。
それは気功教室のチラシだったけれど、見開きになっていて
内側は、中国のレジスタンス記事だった。詳しい内容は書かないけど、日本から働きかけて
その活動が実を結べば、新しい日中友好関係が生まれる、と日本人に訴えていた。
あの人、これを配るためにタクシー運転手をやっているんだな。きっと。
その記事をいいと思うか、悪いと思うか、それはあなたの自由。
でも、話をして。誰かと話したがっている、何か伝えようとしてる、そういう人が運転手だったらね。