Today#38 エミさんは言った

今晩は、さかなの「My Dear」を聴いています。
さかなの中でも、一番思い入れの強い作品です。
なぜかっていうと、そのアルバムの宣伝チラシにあった推薦コメントが
あれから随分経った今でも、ふっと今夜みたいな夜に、耳に響いてくるからです。
きょうは尊敬する人、他人とは思えない人、エミさんの話。


そのコメントとは、こういうものでした。
「素直になるにはどうしたらいいんだろう、と考えているときが、一番素直なときなんだ」
さかなをまったく知らなかった私は、このチラシの一言だけで買ってしまった。
この言葉は私に刺さり、今でもたまに刺さってるんだから私はまだ素直な子になれてないんだろう。情けないけど。
エミ・エレオノーラ、女性のドラッグクイーン、デミセミクエーバーという唯一無比のバンドの歌姫。
エミさんのステージングは、全身から溢れる表現のモンスターみたいなものが見える、
音が体から出ている『全身音楽家』だと思う。
だけどその鬼気迫るエンターテナーぶりの最中に、ビシッバシッと、詩人のナイフが
入ってくるんだよ。すごいのもう、ぐさっ!どきっ!うわぁっ!!!
お祭りみたいなステージのまっ最中や、数日後、数年後のある夜に、
私の姿を見るにみかねた神のつぶやき、みたいな感じでそれが耳元に蘇る。
あの夜にエミさんが叫んだり、歌いだした言葉が、わたしを真空状態にひきこんでしまう。


以前ね。
ライブを見に行った時、エミさんにステージの上にあげられて、熱いキスをされたことがある。
私は(たぶんエミさんも)レズビアンじゃないけど、あのキスは忘れない。
その後言ったの、エミさん、私の手を取って、
「魔除けのキスでーす!これであなた、もう怖いものなし!」
うわぁー!もう参っちゃった。友人いわく『満面の笑み』だった私に、ぼそっと聞こえるか
聞こえないかの声でエミさんは言った。
「ゴメンネ。」
思わず強く抱きついて、嬉しかったよエミさん、と言ったけど聞こえていたかな?
会場の歓声にかき消されたかもしれない。


この夜のことを今思い出して、まださかなが流れているんだけど、
エミさんは「ベルリン天使の詩」の天使みたいに、なやんだりこまったり小さくなっている
私たち、地上の人をそばで黙って見つめている気がする。
『My Dear』が終わったら、なんにも考えずに眠ろうとおもう。

MY DEAR

MY DEAR

↑あれっ?はまぞう、ジャケットが私の持ってるやつと違うけど?