Today#76 ラジオとラジオが繋ぐアメリカ

子供のころ、親戚たちの親切をすべて断って、自らすすんでカギッ子志願をしたのは
FENのラジオを聴きたかったからだ。
うちの実家は福生に近くて、横田基地発のFENがとってもよく聞こえた。
基地に住む米軍向けのラジオ局、べらべら英語で話すから、内容はさっぱりわかんない。
でもかかる音楽が、当時母親が聴いていたレコードと同じような感じで
子供らしく、その音楽に母親を感じて安心できる・・・のもあるけれど
子供は子供なりに、言葉のわからない歌のなかに、お気に入りを見出してたのしんでいる。
膨大な量の音楽がオンエアーされる中、もちろん曲名や名前など知りようもない。
今でも行方不明になったままの音楽が、あたまの中にいっぱいあるんだろうなぁと思う。
大きくなって知恵がつくにつれ、捜索活動や偶然の出会いによって、カンドウの再会を
果たすことも多くなってくるけどね、でも今日は、嬉しかったな。


FMラジオでとてもいい曲がかかっていた。
ここ数年、何度かラジオで出会っていた曲で、でもそれが流れる時に限って車の中だったり
とても忙しい瞬間だったりして、なかなか出会えない。すごくいい歌なんだ、聴くといつも
FENを思い出す。たぶん、よくかかっていたんだろうね。FENを聴いていたころの記憶のなかの
風景、カラーが、あたまに浮かぶんだ。
今日やっとその歌が、アメリカの「Ventura Highway」という曲だと知った。
それで、アメリカのベスト盤を買った。
アメリカ、とても有名なのが「名前のない馬」だけど、私この歌タイトルしか知らなくて
(名前のない馬か、名前をつければいいのに)といつも思ってた。悲しい歌なのかな?
その「名前のない馬」が一曲目に入っていた。それなりにワクワクしながら再生した。
うわっ!!!!!
イントロ聴いて、すぐ分かった、嬉しくて真っ赤になっちゃった。
FENでよく流れていた、お気に入りの一曲だったからだ。正確に、一緒にうたえるほど
よく流れていたし、だいすきだった。


20年超えて改めて聴いた「名前のない馬」は、その馬は名前をつけなくてもよくて
むしろ名前がないほうがいいんだ、とわかった。
70年代のヒッピー達が、何もない砂漠みたいな土地で、焚き火でもしてこの歌を歌って
いる風景が思い浮かんだ。
それと同時に私的な風景、福生の16号線をドライブしながら、金網越しの横田基地
露光過多の8mmフィルムみたいな色あいで過ぎていく景色が浮かんだ。
その風景は今でも変わらずある。だから8mmじゃなくデジタルビデオのように鮮明でいいはずなのに
どうしてその、実際見ていない筈の『8mmフィルム越しの風景』が、頭にはっきり描かれるんだろうね?


FENはもう無いんだって、AFNという名前に変わっていたことを今日知った。
モノラルのAM放送から流れるのは、今じゃいまどきのR&Bなんかなのかな?
それでもたまには、アメリカを流してほしいな、と密かに心の中でリクエストさせて。
「名前のない馬」と「Ventura Highway」以外の曲も、本当によくて
今夜ちょっと、スポンジに水、みたいに全身に染みこんじゃったな。
明日はこれと何枚かを持って、どこかにドライブしようとおもう。