Today#79 ファウスト

ヤン・シュヴァンクマイエルの「ファウスト」をみました。
あの長い長い戯曲をシュヴァンクマイエルが?
これはもう、大変なことになってるに違いありません。
チェコアニメの中でも、というか世界のアニメーションの中でも群を抜いて毒々しくて
人形という造形のもつ怖さを、いつも本当にうまく利用して表現している、あの、完璧で
奇妙な、異様な美に否応なく惹きつけられてしまう。ああ、シュヴァンクマイエル。魔法使い。


映画は実写がベースで、ファーストカットからうひゃあ!と意表をつかれるノーマルな実写ぶり。
しかしその中に、トラップが多いのか、ただのこけおどしなのか、でも後から考えると意味ある・・・
ディテールの小波に踊らされつつ見守れば、人形の登場です!待ってました!
ファウスト」原作は戯曲だけど、そのまま劇中劇のようにお芝居の要素が絡んできます。
ファウスト自身が舞台に立ったりします。もうたいへんです。これは、訳わかんないの一言
じゃ済まされない、超強力なイマジネーションの嵐!
悪魔と天使、道化はすべてあやつり人形という仕様(しかも、人形使いの手が見えているの!!!)
実写パートも独特な奇妙さ、悪魔感に溢れるディテールが普通の街頭に散っている。
いや、これはすごい、面白すぎるって!
もういちいちたまんなくて、キャーキャーしっぱなしでした。
原作の心層の深さはないけれど、あの台本をこんな幻想物語にしちゃったシュヴァンクマイエル万歳!
しかも、ダメ押しでグノーの歌劇「ファウスト」の一部が流れるんだけど
これがこれが!そのオペラの中でも一番奇妙な、でもすんごく惹かれる歌
『まあ!無精な娘さん、まだ眠っているのね!』なんだ〜凄いよ。くらくらした。
この映画の為にこの曲は作られたんじゃないかと、思うほどだ。
さあて、毒りんごも時にはいいんだよ。

ヤン・シュヴァンクマイエル ファウスト [DVD]

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Gounod: Faust / Rizzi, Welsh National Opera

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