Today#85 物音、音楽、美しい調べ

帰り道、渋谷ツタヤに立ち寄り。
何となく中古CDフロアを見ていたら、思わぬ掘り出し物が!
・・・ってここ、意外とびっくりプライスが多いんですね。
例えばあの、値崩れしない『Freesoul』シリーズが中古で一番安い店は、絶対ここと言い切れる。
1000円位だから。こないだなんて300円で出てるのあって仰天したな。もう私が買っちゃいましたけど。
それで今日は、マイケル・ナイマンの廃盤オペラが!なんと800円!
テンペスト〜物音、音楽、美しい調べ」というもので、ナイマンが「プロスペローの本」のサントラと
同時期に作った、同じくシェイクスピアテンペストを題材にしたオペラ作品です。
これがもう・・・・・・・・・・・すごいんだよ。凄い。ずっと大波に揺られている。
元々オペラ・バレエのための音楽(こんなジャンルあるんだね、歌い手とバレエは同じ人?
もしそうだったらすごい。)
から、歌なし部分を全て排除し、さらにテンペストの台詞を多く取り入れて表現したもので。
つまり歌いっぱなし。絶え間ない歌の波、大波小波、いやいや大波しかないんじゃないか?
イントロもアウトロも殆どなく、アリアとかにあたるものも皆無なんだよね。
ずっと歌声が流れている。


廃盤だから日本語ライナーノートから抜粋します。ナイマン曰く
  このオペラは通常のオペラとは異なり、歌手はその役を演じるのではなく、単に
  声として扱われる。
  つまり、プロスペローをソプラノが歌う場合もあれば、アルト、テノールが歌う場合もあり
  三者が一緒に歌う場合もあるのである。
  またプロスペローを歌った歌手が、そのすぐ後でミランダを歌うという場合もあるのである。
このオペラがどんな大変な事になっているのか、少しはお分かりいただけたでしょうか。
そんなトリッキーとも超純粋とも言えるやりかたで、紡がれるのは『歌声の会話』
オペラやお芝居が、ときにのど自慢的に、楽曲主導的に、歌舞伎の○○屋的に
ここだっ!ていう見せ場をかならず持つのとまったく対極のもので、ざわざわ、ゆらゆらと
緩急なく反復する音の中で、流れてくる歌声の群れ。
音だけを聴いていれば、誰と誰が会話しているのか全然わからない。もう主役が誰かすらも分からないわけ。
でも歌詞を見ると、その掛け合いは会話じゃなく、一人の男の心の中をずっと歌ったもの
だったりするんだよ。まいってしまった。
その楽曲の完璧な美しさは言うまでもなくて、しかもすんごい情熱的。
私はナイマンて、バッハと同じような数学的な人という勝手な印象を抱いてて、なんかそれって
グリーナウェイ監督作のせいって気もするけど・・・(まさか「数に溺れて」のせい?)
こんなに熱い、止まらない心の波を、はじめて聴いた。


とても似ているけど非なるものが、スティーブ・ライヒの歌モノ?大傑作「ケイヴ」です。
すごく近い音楽。音階。展開。近いから、違いがはっきり分かる。って二人ともあく強いなあ。
こうして聴いてみると、ライヒ→宇宙の法則、ナイマン→凄くロマンに溢れている。
どちらかというと、ライヒ=バッハじゃないの。
じゃあナイマンは? ナイマン=ベートーヴェン あらぴったり。ピアノの静かな熱とか似てるね。
なんつって言い過ぎた?


 輸入盤はあるみたいです。よかった。 

Nyman:Noises,Sounds&Sweet Airs

Nyman:Noises,Sounds&Sweet Airs