武満徹 Visions in Time展@オペラシティ

目が覚めたら、夕方6時で驚いた。昏々と16時間も眠ってしまった。外は雨。
商店街へ出たら、花屋の店先で、植物がしずくで濡れているのをみた。
雨水を得た植物って、なぜこんなに活き活きしてるんだろう。いいな、綺麗だな、
・・・そうだタケミツ展へ行こう。私の中の武満さんは、こんな感じ。


オペラシティのアートギャラリーでやっている「武満徹|Visions in Time」展。
楽家の『資料展』かというと、全然違う。もちろん手書きの楽譜やメモ、ポスター等の資料は
沢山あるけど、それは核じゃない。
武満さんが捉えた美を、多面的に伝える。純粋な『美術展』 これはお見事!な展覧会だった。
『音楽を美術する』という難儀なお題を、こんな風に構築するなんてさすがオペラシティです。
武満さんはオペラシティ・コンサートホールの監督だった。オープンする前に亡くなったけど。


楽家の美術展とはどういうものか。本質はこの武満さんの言葉に書いてあります。
人間は、眼と耳とがほぼ同じ位置にあります。
これは決して偶然ではなく、もし神というものがあるとすれば、神がそのように造ったんです。眼と耳。
音を聴く時−たぶん私は視覚的な人間だからでしょうが−視覚がいつも伴ってきます。
そしてまた、眼で見た場合、それが聴感に作用する。しかもそれは別々のことではなく、
常に互いに相乗して、イマジネーションを活力あるものにしていると思うのです。



この展覧会では、日本のフルクサスみたいな芸術家集団『実験工房』での、美術や詩との共同制作や
貴重な前衛スライドショー作品(これ凄いです!)周辺アーティストの絵画やオブジェクトがある。
実験工房の活動自体もよく分かります。自らのドローイングも展示されていました。
ちょっと感動的だったのが、仕事部屋の再現。ピアノと机が置いてある。机上の小物をじいっと細かく
見ると、時が止まっていて、でも流れている。机上に雑然と置かれた、彼を示すキーワードを探るんだ。
そして次の展示室は、彼を示す絵画の部屋になっている。直接的に関わった画家の絵ではなく、
武満さんの視聴覚を同時にのっとってしまった美術作品の展示です。
ロダンやクレー、ミロ、イサムノグチなどがあって、それぞれに短い文章がついている。
それらの作品から音楽が聴こえたことを、伝えている。


図形楽譜 というものを初めて見ました。
これが、楽譜なんですか・・・。円形をベースに幾何学模様を足した抽象画のようで、時間軸と音程を表してる。
武満さんの説明書きを読んで解読を試みるも、ここから♪を見つけることはできなかった。。
デザイナーと一緒に造ったのもあり、それはどう見つめても、視覚のアートでしかなく。
この図形が示す音楽を聴きたい。探そう。


さて、あとは数々の資料集。武満さんといえば映画音楽!映画のポスターが山ほどあります。
現代音楽のイベントチラシ、パンフレット、ジャケットの展示で武満さんの仕事を振り返ったら
最後の展示作品は、武満さんのみた風景を追体験するような、映像インスタレーションで〆です。
すべて満喫するには、2時間半〜3時間はみておいたほうがいい。とても盛りだくさんです。
そして今回パンフレットが素晴らしい。パンフレットというか単行本で、アマゾンで普通に買える。
この展覧会を丸ごと本にしている上に、更に武満さんの数々の文章が追加掲載されていて
純粋に一冊の本として、とても大事な一文に沢山出会えます。この人の言葉は良い。かな〜りおすすめです。

武満徹―Visions in Time

武満徹―Visions in Time

今夜は「系図」に泣きました。谷川俊太郎の歌詞は本当に素晴らしい。
武満徹:エア,弦楽のためのレクイエム

武満徹:エア,弦楽のためのレクイエム

もういっちょ ど定番でごめんなさーい!『砂の女』も『乱』も入っているなぜ砂の女のサントラはないのでしょうか。アントニーガウディも・・・。