Today#103 あら〜ウォン・カーウァイまでも。

ガブリエル・ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』を読み終わった。
いやぁもう凄かった、素晴らしいです。完璧な物語でした。


 その朝、サンティアゴ・ナサールが殺されることを、街中の全員が知っていて
殺しを阻止してほしいとしか思えない、充分すぎる犯人の殺人予告にも関わらず
群集の中で殺人は実行された。
街がまるで劇場かのように、この世界は、ただの円形劇場だとでも言うように。
なにゆえに?どうやって?いつどこで誰が? 
これはそういった、殺人事件を追うミステリーでも、人間ドラマでもない。
これは運命のからくりを表現した物語で
一つの殺人をサンプルにして、感情のマンダラをたどってゆく話だったんだからびっくりだ。
『偶然』という矢が一斉に放たれて、それは蜘蛛の巣のように見事に整列して
なんと『運命』を作ってしまった!
『運命のいたずら』というよりも、もうね『これが運命だ!』ガボすごい。
運命って何だ? と思うあなたにぜひ出会ってほしいよ。
既にうっすら見えているだろう、運命の工場の秘密がはっきり書かれていると思うから。


読んでいて、途中でわかった。
ガボのマジックリアルワールドが炸裂するのは、きっとラストシーンだって。
私はこの本の最後を読んで、本当に、全身がぞわっとした。
だってこのマジックリアリズムに至るまでの、現実のパズルが、マンダラの紋様が、
あまりに完璧だったんだよ!!!!!


殺人事件の朝、人々それぞれの生活が流れる、数時間の出来事。
同じ時間をバラバラの視点で切り取ると、体験と感情がみごとにバラついてる・・・
事件の状況を追うには、時間軸がめちゃくちゃすぎる構成なんだけど
事件を感じるには、これしかないという構成になっている。
本当にね、凄いなぁと思う。


訳者あとがきを読んだら、なんと、だ。
ウォン・カーウァイは『予告された殺人の記録』を読んで『欲望の翼』を作ったんだって。
欲望の翼』以降のカーウァイの映画は、そう言われてしまうとまったくその通りで
だからカーウァイ作品はこんなに肌に合うのか・・・。
またか。またガボの息子だったのか!うひゃあ、またやられた!!!

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)