Today#105 Go Go Round This World

ガルシア=マルケスの小説のように、偶然の矢が飛んできた。
指し示す運命はただのロードミュージック 
深夜の銀座、朝の代々木、それから媒介者の私、三つの線が描いた模様。


たまたま、日曜にCD屋で、The Jamの「All Mod Cons」がDeluxe Editionシリーズで
再発されてるのを見つけて買った。
擦り切れそうになるほど聴いている、大好きなアルバムだけど、暫く聴いてなかった。
それからいつだったか、先日ラジオでフィッシュマンズが唐突に流れて
びっくりするほどにやけてしまうほど、癒されてしまったので
彼らの「Go Go Round This World」をipodに入れた。
この歌、じつは佐藤さんがあの世界へ飛んで行って以来、一度も聴いていなかった。
なぜか。凄く好きな曲なのに、なぜか。それはシングル盤だったからかな?
そして昨日、それをipodに入れたのはなぜだ。


かくして私のipodにこれらの音楽が入りまして
運命は私を夜の銀座に一人きり、放り投げた。
・・・うーん 久し振りに、やってしまった。予定外の徹夜仕事。途方に暮れるような。
時間が無い。体がおかしい。そしてやる気が全然でない。
絶体絶命だ、どうもこうも、私は一刻も早く家に帰って眠りたい。
そして、よくあるファンタジーの主人公が、たまたま手に入れた魔法の杖のように
あっ!私のポケットにはポールウェラーがいるんだったわ!
(兄貴、そばにいてください。)
ポケットを叩いてipodを鳴らし、黙って走り出すJamの音楽についていった。
道はそれしか見えない。暗い心と夜のなか、照らされてるのはここだけだ。
世界を走れ とたまに兄貴が言うんだよ。ぼそっとぶっきらぼうにね。ついてこい って。


朝方、5時頃だったか、Jamの連続が終わったら
フィッシュマンズが歌いはじめた。
「もう、いいよ 歩き出そうよ」
つい笑っちゃった。もういいよね。家に帰りたい。微妙な賭けだ、帰ったら仕事が間に合うかどうか。
でも、こんなときこそ偶然の音楽に従え。
だってそのあと、佐藤さんはこう言うんだから。
「この景色の中をずっと 二人で回ろうぜ
 この景色の中をずっと 二人で歩こうぜ
 このゆううつな顔もきっと 笑顔に変えようぜ」
さっき鏡の自分の顔をみてぎょっとするほど、憂鬱で死んだ目の顔をしていたから
そうだね、と言って家に帰った。
この歌に何度も愛を感じたことを、すっかり忘れてた。
愛だね、汚れていない、そして見失ってもいなかった。


帰ってもロクに眠れやしなかったけど、体は随分よくなった。
残り物の味噌汁だけ食べて、それがどれだけ空腹に効果的かを知り
おかあさんの言うことはだてじゃなかったわ、とか思いながら
満面の笑顔の母親と、父親の写真に向かって、久し振りにこんなこと、行ってきますを言った。
さあ行こう、もう明るい空の下、道は幾つもみえている。
この景色の中をずっと! って人通りの無いのをいいことに、歌って歩いたら気持ちよかった。
世界をまわる二つの足のお話。
右足はジャム、左足はフィッシュマンズ
きょうはね。

All Mod Cons (W/Dvd)

All Mod Cons (W/Dvd)

Go Go Round This World!

Go Go Round This World!