Today#126 冠婚葬祭の『婚』 ガキ大将の涙

きょうは従姉妹の結婚式。
親族として式に出席するのは初めてで緊張しました。だって変なことしたら、この家は!と思われちゃう?
だから今日は親友の婚礼に出席する時の、あほっぽいともとれる陽気なお祝い服は黙殺。
黒いラメ入りお色気ドレスという、私にはほぼコスプレに近い服装をさせられた。
いや恥ずかしかった。私は杉本彩じゃないっちゅうの。あれぐらいしないとダメなのか大人って。
きっと参列者の中で、私がザ・フー馬鹿のディレクターだと見破った人はいないね。
そんな訳で、冠婚葬祭の『婚』のはじまりです。


二人はインターネットのお見合いサイトで出会った。
この確率ったらすばらしい。私は諸手をあげてスゴーイ!とよろこんでたのだけど
それを知った親戚達は、大丈夫なのその人信用できるの結婚詐欺じゃないの…と
二人にとっては大きなお世話をやきもき、やきもき。
うちの一家が結婚報告を聞いたのも、彼女とお相手はまだ3回しか会っていないという時期で
3回で決めるとはよほど惚れたんだね、と思う私に、うちの親はダマされてないか心配だと言っていた。
それはきっと、お相手の親戚だって同じだ。わたし思ってた、なにごともそう、顔をみればすべてわかる。
顔をみれば、みんな笑う。まちがいない。


彼女と私は一歳違いで、こどもの頃は何かと一緒にいたり、比較されたりもした。
元気で男の子みたいに走り回る彼女と、おとなしく本を読んだり音楽を聴いてた私は
お互いに、彼女は私のように女の子らしくなれとか、私は彼女のように思ったことをもっと表現してとか
言われてもあんまり気にしないようでいて…気にしてた。
そして大人になってくるにつれ、いつのまにかその性質が逆転した。親達に言わせれば。
でもセクシーレディーになっちゃった彼女と、ボーイッシュを越えて男らしくなった私がちいさい声で話すとき
やっぱりあんまり変わらない感じがした。
彼女は口が悪くて、ガキ大将みたいにばっさばっさと斬るように話す。
私はもそもそっと、伝わるかどうかわかんない微妙なことをいう。


式の前、花嫁は親戚控え室に現れて、何かを話そうとして突然泣き出した。
涙は見事にぜんぜん止まらなくて、お付きの女性が困ってしまったほどだった。
わたしも泣いてしまった。ああ、ガキ大将の涙をみてしまった。
親戚達、みんな慈しむように、ニコニコと笑っていた。やっぱり結婚式は圧倒的に幸せな空間だ。
彼女はそれから泣きっぱなしだった。


披露宴で花嫁が親に宛てた手紙を読んだとき、わたしはまたビックリして泣いてしまった。
彼女はほんとうに口が悪くて、それがまた面白いんだけど、今に至るまでずっとお父さんの悪口を
言いまくっていたんだ。彼女の父親はのんびり屋だから、何を言われてもニコニコしてる。
彼女はそれを見てまた、ばーかとかきもちわりぃーと言っている。
そう、今夜彼女は、まず父親に向かってこう言ったんだよ。
「父は私のヒーローでした。」
きっと彼女の人生において、こんなことを父親に言ったのは初めてのことなんだ。
のんびりパパはじつは競輪選手で、定年とされる歳まで走り続けていた。
彼女はその父親を、大好きで尊敬しまくっているのに、裏腹に悪口を言い続けて
本当の気持ちをずっと言わないでいたんだね。
パパのばーか ニヤケてんじゃねーよ こっちみるなエロジジイ なにその顔!きもちわるくて吐きそう
こどもの頃から見ていた、思いつく限りのこどもっぽい罵倒の嵐(笑)
そばで笑いながら、言い過ぎでは?と時にヒヤヒヤして見ていたやりとりを思い出す。
きっと会場にいる99%の人には、美しいスピーチに聴こえたであろうこの言葉を
私はまったく別の感慨をもって聞いていた。
ガキ大将は31年かかって、やっと伝えることができたんだ。
本当によかった。


ちなみにインターネットで知り合って怪しい男呼ばわりされた旦那さんは、じつにいい人そうで
たぶん…テンパリ屋さん(笑)
ガキ大将は、そんな結婚式でテンパる旦那さんに、さっそく悪口を投げていた。
でも旦那には素直な気持ちを、何十年も隠すなよ!ヒロちゃん。