Today#127 日曜美術館30周年のお宝映像。

NHKの『日曜美術館』が30周年だそうで。
30年間のアーカイブから選び抜いたベスト版をやっていました。
むちゃくちゃおもしろかった。もし再放送をやってたら、ぜひ見てください。
なんか最近、NHKと教育テレビばかり見ているなあ…。
それでは、うっかり見逃した方のために覚書。


岡本太郎奈良美智のアトリエ訪問もよかったんだけどね、
何が面白いって、著名人の方々が好きな画家について熱く語るインタビュー!
この人が愛する美術は…?そしてどんな風に作品を見つめているのか?
どんなに理性的な人も、愛する美術を前にすると、ただの感情だけになっちゃう。
その美術そのもの、作家のまるごとの表現のどこに惹かれるのか?を語ろうとして
結局「好きなものは好きなんだ」「とにかくスゴイ」という単純な個人的な愛情に立ち戻って
アツイ目でだまってうなづいている。
美術のカタルシスは強烈だ。目とあたまと空気まで支配するし、心と全身を奪われる。
そのカタルシスの感じ方は、受けた人の魂のかたちと呼応するから
著名人の選ぶ美術はそれぞれ、とてもしっくりいくものだった。感動的なほど一致する!


手塚治虫は、鳥獣戯画
これを見たときに、マンガの表現は、何百年も前に全部やられてしまったと思ったんだって。
手塚さんは筆を持って描いていた。あのウサギの戯画をさらさらと。
遠藤周作は、ルオーのキリスト画
あの土着的で素朴なイエスの絵は、ただイエスの姿をひたすら美しく描いて賛美するのではない信仰心
もっと違う信仰心から描かれたって言う。みんなと同伴して歩き、いつもそばにいる『神様』
遠藤さんのキリスト教観と一致したのはルオーのイエスだけであって
ルオーの絵は、遠藤さんの作品の根っこから存在して居る。
武満徹はルドンに共鳴してる。
生命の原始の記憶、ものが形を成さない時代の記憶を私達は持っていて
(おそらく花の中に最初の視覚が試みられた)
ルドンはその記憶を、あの幻想的な魔術絵画に表現していたって言う。
ルドンの「閉じた眼」をみて、彼は世界から音楽を引き出した。閉じた眼、開かれた耳。
(私はルドンが凄く好きだ、だから彼の音楽に惹かれるのかもしれない)
谷川俊太郎フェルメールに心底惚れている。 
とにかくきれいだなあ、本当にきれいだなあと思っているだけで
フェルメールの絵には、感想とかでてこない。ただきれいだなぁってぼーっとして見とれてる。
目が触覚になるような感じがする。とにかく美しい。そればかりで。
言葉を操る詩人が、そのナイフをおろして、とろんと見ているだけなんて。恋しているみたいに。


私はいつも素晴らしい美術に出会うとき、その美術についてちゃんと伝えようとして
結局のところ抽象的で、感情的な言葉だらけになってしまうけど、それはみんな同じなんだな!
谷川先生ですらね!