ズバリ!ラストラブレター

拝啓 デキシード・ザ・エモンズ


今日は素晴らしいステージをみせてくれてありがとう。
大道芸的で、飲み屋的で、今が2006年の東京であることをすっかり忘れてしまう
1960-70年代のロンドンの生演奏を聴かせてくれてありがとう。
それができるのは、あなたたちだけでした。
今の時代にザ・フーを大音量で聴いて、現代のヒット曲の多くがうわべに聴こえて
音が悪いとかださいとか古臭いって言われても、黙ってひざを抱えてザ・フーを聴いて
その光を信じてたとき、あなたたちは現れた。
ネオGSとか懐古趣味、モッズなんて修飾言葉、私にはどうでもよくて、ただ嬉しくて!
ぴったりした古い服を着て、ばかみたいにピートのようにギターを振り回して、
ムーニーのようにドラムキットを叩いて遊んでいるあなたたちに心底惚れました。
凝りに凝った多重録音も、3ピースのロックンロールも、どうやったって
現代じゃない、あの時代の音になってしまう、私には丁度いい熱さの音だった。
あの時代、というのは単にアンプや楽器の音色だけじゃなくて、演奏、つくる音楽
うたう歌、ソウル、勢い、表現するすべてのことだ。
「間違いつづけて16年」今夜そう言った、そうだね、その通り。
でも私にとっては、正しく16年だったよ。なんて真っ直ぐなんでしょうか。
私いろいろな音楽を聴くけど、あなた達を聴いてほっとするのは、
今あの音を出してくれるバンドが日本にいるっていう幸せだった。
あなた達のライブが凄いほど、発表する音楽が素晴らしいほど、私は間違ってないんだって
そう思えたんだよ。
ヘッドホンを外して街へ出て、ふらりとライブハウスに入ればいつでも聴けるその音楽、
時代錯誤?けっこうじゃない。正しいものは正しいのだ、
素晴らしい音楽はいつどこで鳴っても素晴らしいのだ。
冗談のようなバカウマライブで私達を笑わせてくれてありがとう、音楽は楽しい。
そしてふとしたとき心を温める。生活のなかで、あなたたちの歌を思い出す。
ラジオであなたたちの音楽が唐突に流れたらどんなにいいだろう、と思うことがよくある。


あんたがたのくだらない悩みより、俺達のほうがはるかにくだらないだろう?
だからくだらねえ悩みが降りかかった時は、いつでも俺達のところへ来い、
俺達はもっともっとくだらないことしてるから、ずっとそうしてるから
そんな時は会いに来てくれ、俺達を見て、笑っていただきますよ!



ありがとう、ありがとう、ありがとう!
これからも、私はそうする。
モンティパイソンを見たり、どうでもいい話で笑うのと同じように、
私あなたたちの音楽を聴くよ。
そして、ばらばらになってもステージでくだらないことしてる音楽家達に会いに行くよ。
16年間お疲れさま、
いつもと何も変わらず、感動させようとか全然計算してないのに凄かった、
最後のライブを観終わった今「ブエノスアイレス」のラストシーンのような気持ちでいっぱいです。
“会いたいと思えばいつでも会える”
本当にありがとう。


いちファンより 愛をこめて!