タリエ@横浜新港ふ頭

akk2006-11-25

横浜みなとみらい、赤レンガ倉庫のそばの埠頭へ。
こんな映像インスタレーション・パフォーマンスを観に行ってきました。
「タリエ」 http://www.terje.jp/
今年2006年は、イプセンイヤーだって知ってましたか?その一環で行われたイベントで
イプセンの詩物語「タリエ・ヴィーゲン」をイメージ映像化して、コンテナに設置した
5面の巨大マルチスクリーンで上映…こりゃすごそうだ。
屋根も壁もなく、埠頭そのままの会場。無愛想にガツン、ゴツンとコンテナのスクリーンが積まれ、
すぐそこは海。上空には飛び交う飛行機。今日は晴れていたけれど、雨天でも決行の潔よさ。
その港の空気もまるごと舞台の一部で、雨が降ってもかまわん、と。作品を見て、本当に雨でもOKだなと思った。
飛行機の轟音と光が映像に異様にマッチする瞬間が何度もあった。
今まで、本国ノルウェー灯台下でしか上映されていない作品で、海外で行うのは初だっていう。
それは、演出家が求めるロケーションが揃う場所がなかったからだ。
それだけ上映する空間のもつバランス、空気、存在感が大きく占めるってこと。

入口には大きな灯台の灯り部分がのっかっていた。光っているんだ、くるくる回って!
この最大の小道具は、約一ヶ月かけてノルウェーから輸送されてきたらしい。
ドキドキした、最高だ!運命だ!!タリエのHPすら見ずになんとなく来てみたら、灯台の光が目の前にある!
一言だけ言わせてください。私、こどもの頃から、灯台の熱狂的なファンなんです!灯台に目がないんです!
きりが無いのでこの話はまた。


映像がマルチスクリーンで流れ、灯台のような光を手に持った4人のダンサーが現れて踊る。
スクリーンはしわくちゃで、船の帆のようだよ、港の風に吹かれて揺れている。
時折コンテナの間にダンサーが出てきたり、スクリーンの上に大きな布が被さったりする。
語りは日本語で、伊武雅刀がやっているのだけどこれが素晴らしかった!時々本人も映像に出てくる。
タリエ・ヴィーゲンの物語は、海の男タリエの受けた屈辱と深い苦しみ、そして復讐、赦しに至るまでの
海のように深く恐ろしく、真の透明をたたえた美しい物語だった。
灯台のレンズを通して撮影した、たぶん世界初と思われる灯台映像が何度も出てくるんだ。
マルチスクリーンで、見渡すかぎり一面に。これはいつかやりたいと思ってたから、やられたな!
きっと監督もハンパない灯台ファンに違いない。ファンぶりが随所に伝わってくるんだもの。
この物語と、灯台の明滅を直結させた映像&舞台演出!こんなに灯台をフィーチャーしてくれてありがとう!
対岸の端と端に立つ灯台と海の180度映像や、海中から船底を撮影した古いフィルム、海面のさざめき、
海の男たちの大昔の記録映像、記録写真…
そして伊武雅刀のフル坊主語り。伊武さんすごいよ。あの声そして目線。表情。アナタが出るたびやられっぱなしでした。


総合演出は、リレハンメルオリンピックの開閉会式を演出したチームだそうだ。
舞台と映像に境目がなく、飛び交っているようなパフォーマンスと映像の融合にうっとり!
ほんとに細部まですべて意味があり、完璧だった。考え抜かれていた。感心したなー。
最後の最後に、スクリーンが上がった。剥き出しのコンテナが現れ、ダンサーが踊っていた。
中央に一つだけスクリーンが残ってて、そこに伊武が映ってカメラ目線で語りかけるわけ。
詩の冒頭のセリフを、もう一度。
泣いたよ。完全に。伊武に泣かされた。
タリエ・ヴィーゲンの復讐が赦しに至り、すべての黒い影から解放されて生まれ変わるまでの語りと演出が
本当にもの凄くて…ここで終わりなんだな、神と海の祝福を受けて波が静まった…そう思ってたら伊武が!最後に!
とにかくね、この詩は上記URLからPDFダウンロードできるので、読んでみてください。
それで私のつたない実況と、サイトのムービーや画像から、この素晴らしい舞台を各自イメージしてください。
だってすごく勧めたいのに、体験してほしいのにもう終わりなんだもの!
約一時間の野外上映は寒かったけど、本当にいいもの見たなあという感じで、胸いっぱいです。
まるで横浜トリエンナーレのようだったな、アウトドア空間芸術。
横浜は、なんと野外アートが似合う街なんだろう!と思っちゃったよ。


私信:Kさんへ
今日は本当に、きみを連れてって見せてあげたかった!
6-7年前、前回の横浜トリエンナーレの時、朝まで踊った赤レンガ倉庫の一角ね、
きょう久し振りに入口をみたら同じだった。ファッションビル化してない棟で、人が極端に少なくて。
あの夜と綺麗な朝を思い出したよ。
海に、銀色の大きなボールがいっぱい浮いていたね!草間弥生の。覚えてる?