ザ・ビートルズの新譜 『LOVE』

ビートルズのノンストップMix盤と聞いた時は、正直あまり興味がもてなかった。
しかし、これはビートルズの「新譜」なんだと知った。
…新譜。
2006年にタイムマシンに乗ってやってきた、4人の若者たちが
レコーディングスタジオで、未来の機材に大はしゃぎしながら作ったアルバム。
もう私の頭には、あっという間にそんな光景が浮かんできちゃった。
そして、この空想は、あながち間違ってもいなかった!
今日は偉大な2006年産アルバム、ザ・ビートルズの『LOVE』について。


ザ・ビートルズの楽曲は完璧に完成されている。
これはもう、いじりようもなければ、どんなにリミックスを施したって変わらない。そう思っていた。
そのアルバム毎、曲毎に確立した世界を変えることはできないだろうって。
『LOVE』は、そのことを誰よりもよく知っているジョージ・マーティンが手がけた。
そして、魔法の杖でひとふり、銀のキラキラした粉を降りかけて、それらの世界を変えてしまった!


今まで私の心の中で鳴っていたザ・ビートルズと、すべてがそのままのようで、違ってる。
あれだけ独立したそれぞれの楽曲が、ひとつの長い長い一曲になっている。
それは、今までどの曲にも感じていなかった「新しい世界」だった。


初めてリッチーホーティンやジェフミルズのDJを体験した時、既成の音楽をつなぎあわせて
加工したり、複数の曲を同時にかけたりして、2時間の「一曲」をつくるのがDJなのか!と衝撃を受けた。
それから中学生の頃、ラジオで小室哲哉氏が分かりやすく「ハウス」という音楽を説明してた。
色々な音素材を、ひとつの「家」に入れるということです …驚いちゃった!
それらが音楽のかたちとして当たり前になっている今、ザ・ビートルズは新譜を出した。
ザ・ビートルズが表現した「78分53秒の一曲」がLOVE。 


ぜひイヤホンやヘッドホンで聴いてほしいんだ。
このアルバムの音質はipodにしっかり合うよ。本当に音が綺麗なの。
だからまず、耳から一番近いところに置いて、音楽を耳の内側に閉じ込めるように、
密閉して、耳の中から全身へ流れるようにして。
なぜかっていうと、音の響きと空気感を、もらさず体験してほしいから!
きっとビックリすると思う。そしてうきうき、わくわくしてくる。そういう空気感なんだ。
なんていうか全体に溢れている、繊細で心地よい響きがとても気持ちいいんだよー!
彼らの歌声や演奏が、今までにない新しい音質で飛び回っている。縦横無尽に。
曲ごとにきちんと結ばれていたヒモが、一気にほどけて混ざり合っているの!すごく楽しそうに!
聴けば聴くほど、このアルバムの凄さがわかる。今まで控えめに鳴っていて気づかなかったギターの音が
はじけるように躍り出てくるし、感心するほどぴったり当てはまる、音のコラージュの連続。
エフェクト加工は、ほんとうに細部まで作りこまれている。世界一エレガントなMixCDだなぁってうっとりする。


きょう『LOVE』を聴いていて、こういうミックス盤って他に無いよな、なんでだろうと考えてたら気がついた。
まるでライブのようなの。出来上がったレコードを、ライブで演奏すると変わるでしょ。
自由に他の曲のフレーズを混ぜたりするし、違うアレンジにする。その感じに似ているんだな。
今、彼らがノートPCを使ってライブをやったら、こんな風になるのかもなんて思ったりして…。


タイムマシンに乗ってきた4人は、もうとっくに彼らの時代に帰っていっただろうけど
私達は、おかげで彼らの新譜を聴くことができる。そういうことだ!なんと嬉しい!
新しいLOVEを、あなたの全神経へ。

LOVE (通常盤)

LOVE (通常盤)