喫茶店で一人旅についてかんがえる

調べによると阿佐ヶ谷には、深夜までやっているカフェが多いようです。嬉しい…。
会社帰り、ちょっと気分転換したくなったから立ち寄った。
南阿佐ヶ谷駅のそばにある「Orange」というお店で、とても落ち着く空間だった。
私はカフェマニアではないけど、よいカフェに行くとよい音楽が流れているし
ひととき、旅行先にいるような錯覚を覚えるから好きだ。
数百円で旅行できるんだから、まったく安いものだなぁ。
今夜は美しいハウスミュージックを聴かせてもらった。ご飯も美味しかった。


お店に置いてある雑誌を読むことにした。
BE-PAL増刊号の旅雑誌「b*p」ってすごくいい雑誌、発見。
京都の長屋を改造したゲストハウス(一泊1500円位で泊まれる、という…)の紹介だとか
国内の島大特集、旅に合う本、色んなスタイルの旅を載せていた。
夏フェスも旅だっていう視点で捉えてる特集もあって、そうなんだよね、とうなづいてしまった。
踊って、感動して、歩いて見上げる夜空や木々の緑、日の出の美しさ、音楽。
年に一度は旅にでる。そんな気持ちでフジロックや朝霧ジャムにゆく。


一人旅を掘り下げた特集がとても面白かった。
一人旅についてのインタビュー記事があり、大竹伸朗細野晴臣がそれぞれ一人旅を語っていた。
二人に共通するのが、誰かと行くと、深く潜れないという感覚。
大竹さんはもう、旅といえば一人!絶対一人!と言い切ってる。
旅先で、自分自身が感じた衝撃や発見を、誰かと「これはこうだね」って判断しあうのは甘い!
自分の眼で見た風景を、自身の心で受け止めろ!っていうね。おもしろい漢だね。でも正しい。
私は時に、すごいいいものを見ちゃうと(誰々に見せてあげたい)と思うほうだけど
結局(誰々)がそばにいないから、私の眼で見て感じて、伝えるんだー!という気持ちに着地する。
大竹さんはとにかく歩いて、風景と場のグルーブに出くわし、絵を描きまくるんだ。
細野さんは、対極の旅をしている。完全にリセットの旅。
大自然の中に身を置き、日々の電磁波のような、体に溜まったデジタルを一掃するために旅に出る。
一人旅でないと、精神を完全に集中することができないでしょ。そう言う。座禅を組むように。
最初の夜は、眼を閉じるとまだ東京の事務所の残像が浮かぶんだけど
次の夜は、それがなくなる。ああ、デジタルの生活が体から抜けつつある、と感じるんだって。
そうやって自然と溶け合い、心身をゼロに戻している。


あなたの一人旅は、どっちに近い?
私はたぶん、大竹さんの勢いに近いとおもう。
私の初めての一人旅は、オーストラリア、メルボルンだった。
ただその年の大晦日に、その場所で行われるレイブイベントに行きたいがために飛び出して
英語もままならず、それでもバックパッカーの宿で出会った人々と会話らしきものをし、
見ず知らずのオージー達と一緒に、ハッピーニューイヤーを祝った。
あの旅は異様に鮮明に覚えている。風景、温度、心の感覚、音楽と彼らの顔。


細野さんの旅に近い体験も訪れたことがある。一人旅じゃなかったけど
白川郷で合掌造りの村をみたときだった。夜、ほんとうに『しんとした音』を聞いた。
初めは自分達の足音、雪を踏むザクッザクッに耳を澄ましていたけれど
立ち止まり、全員が話すのをやめたら、辺りがいきなり無音になった。
見上げると満天の近い星空と、黒い大きな山々に囲まれていて、
『しんとした音』に全身が包まれた。
わたしはどこへ来てしまったんだろう と思った。それから意識は体から抜けて
体など無くなったように、ただの『存在』と『自然』だけになり、
『存在』は『自然』に溶けてしまった。
ぽつりぽつりと、誰かが「すごいね」ってつぶやく声が、
信じられないほど耳のそばに響いて聴こえた。あの夜の数分間は一生忘れないと思う。


って私、南阿佐ヶ谷にいることをすっかり忘れて、一人旅気分を満喫して帰ってきました。
帰宅したら、もちろん庭に出て、星空の下で洗濯物干した。気持ち良かった。
今夜はこれを(眠る前に読むと毎晩モロッコ旅行状態)Have a nice Trip.

カスバの男 モロッコ旅日記 (集英社文庫)

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