「奈良美智との旅の記録」

あぁ・・・今週末がラストチャンスだったのに。
金沢の21世紀美術館で、奈良美智の展覧会「月夜曲」がやっているというのに
私はなんていうていたらくでしょう、ダラダラ、いつ行こうかなーと思い続け、今東京にいます。
行けない最大の理由はお金がないから。なんとなさけない!馬鹿者!愚か者!節約しとけばよかった!
代休とって金沢に2泊してー雪釣り見てー和菓子食べてー21世紀美術館に毎日行ってーかに食べてー
お仕事でお世話になったひとに会いにいこうかな!
・・・といった私の全計画は妄想に終わりました。
3/21まで開催してるので、ぜひ行ける人は私の代わりに堪能してきて下さい。
まあ、今日はなつかしい人と会う約束もあったから、しかたないや。
とかいいつつ、その前にシネマライズのちび劇場、ライズXへ立ち寄り。
ただいま公開中の映画「NARA:奈良美智との旅の記録」を観てきました。
昨年夏、弘前で行われた「A to Z」展へ至るまでの道のりを追ったドキュメント映画。
金沢へ見に行けないから、せめて映画で・・・もちろん観終わった後さらに悔やんだことは言うまでもない。


奈良さんの絵が奈良さんの心の中のようすを現す、それを外側から照らし出す。
この映画は奈良さん自身の言葉や表情、誰かとの会話、だいじな独り言を淡々とひろい上げて、
それが内面の風景へ影響し、変化していくさまを描いている。
確かに、最近の作品になればなるほど、好きだった。
絵の中の女の子の表情が、世界を静かに、時に爆発的にやぶにらみするものから
純度222%の星空のような、澄んだ瞳の透明なマリア様に変わってから、
ただ2次元の絵におさまらず、みている私の周りの空気を変えてしまう凄さがある。
深い深い水たまり から 虹 になったようだ。
それが、奈良さんの孤独のありようの変化だったなんて。しかも、それはとてもシンプルな変化。
映画はそんな風に(言うわけでもなく)伝えている。


その変化とともに、奈良さんの「小屋づくり」という空間描画が発展していったら
私たちは、奈良さんの世界のなかを歩き回ることができるようになった!
小屋のなかにいる人形、絵画、ビールの空き缶、CD、犬、それらが想念の断片としてそこにあり
これが奈良さんの「夢」のなかの世界として、私たちがそこに迷い込んだとしたら
その世界で、絵画はもっとも重要な心のかけらのような形で、そこに置かれている。
初めて訪れる場所の風景のなか、ふと出会うように絵画が飾られている。
ぎょっとするものから、さりげないものまで、飾られ方はさまざまで・・・感心するほどの。


弘前に現れたA to Zは、どこでもないどこかの世界、蜃気楼のように現れた世界、
もういまはない。もう一度行きたいのに、何度も行きたい場所なのにもうない。
この映画で、最後にA to Zの小屋が燃やされるシーンがあって
涙ぐむ奈良さんとともに、私も涙ぐんだ。すべて、また新しく生まれるなにかのはじまり、
焼け跡を突っ切り、荒野へ針路をとる奈良さん、きっとA to Zのあと、金沢の展示は絶対にすばらしい。


ちょっと猫背の兄貴の背中が、世界じゅうの路上を歩く。
その後姿をみていたら、
勇気がわいた。
ありがとう兄貴。