六本木の春 Part2〜ポリス インサイド・アウト

TOHO CINEMAS六本木ヒルズで、ポリスの映画が二週間限定ロードショー中です。
この映画は、普通の音楽ドキュメンタリーフィルムとはちょっと違う。
だって、ドラムのスチュワート・コープランドご本人が撮影した映像!
個人的に撮影していたものを、一本の映画にしたもので。
8mmフィルム、今はなきSUPER8で記録した『ポリスのホームビデオ』
それは貴重な記録だし、ファンが喜ぶ映像だけど、そんな安易なものじゃなかった。
それはポリスの音楽のように、スチュワートのドラムのようにセンシティヴな『映画』で
バンドに人気が出はじめてから、絶頂期、そして解散までのポリスをめぐる風景を
内側からみつめた、つぶやくような作品だったの。


映画は、ほぼ全てスチュワートの撮影素材。
世界中のファンが、カメラに向かって駆け寄り、嬌声を上げて押し寄せてくる。
スティングとアンディ・サマーズは、いつもどこかの室内にいる姿が映っている。
窓の外、街の風景、流れていく幻のような世界の風景。
たまにライブの映像。スチュワートはドラムセットの背後に三脚を立てて
わざわざカメラに繋げたマイクを胸元につけて、ライブ中にドラムを叩きながら
振り返ってカメラに話しかける。誰にでもない、カメラに向かって。


ロックスターは突然に。スチュワートはつぶやく。
しばらく、自分で運転したり食べ物を買いに出ることもしていない。
誰かがやってくれるからだ。
すべてが、すごい速さで過ぎていく、
ライブの時間だけがリアルで、それ以外はすべて幻のようだ。
・・・成功すればするほど、僕らは結束して助けあうことがなくなり
どんどん、孤独になった。


孤独を抱えたスチュワートが映す、窓の外の風景はぼやけている。
曇って、霧のように、幻の境目を眺めるように、ただ見ている。
金、音楽、孤独、とりかこむ群集、ライブの熱、ルーティーンワーク、やらなければならない仕事
3人の男が非現実的な時間軸を漂い、その終わりに辿り着いた『終わり』
最後に、解散を決めた彼らが映る。
晴れやかな顔で、青空の下、子供みたいに笑ってた。


ポリスの歌には「ロンリネス」「ロンリー」が多く出てくる。
孤独、それをすくい上げて水に投げると、波紋が広がったり、水面がキラキラ輝いたりする。
ポリスは孤独を、そういう風に扱った、そう思っている。
美しくて細やかな心のひだが音楽を作り、それを聴いた私の足元から波紋が広がる。
そのうちに、そこからジャンプするんだ。


この映画はとてもポリスらしい映画だと思う。
ロックスターの素直すぎるほど素直なつぶやきが、痛いほど視覚から伝わる作品だった。
帰りにポリスのDVDを二枚借りた。ひとつはライブ、もうひとつはビデオクリップ集。
ライブは本当に素晴らしく、ビデオクリップはなんだか間の抜けたアイドルビデオみたいなものがほとんどで。
映画の中に、ビデオクリップの撮影風景が出てくる。
スチュワートは「ビデオクリップでは、ドラマーなんてばかみたいにただ居るだけだ」と言っていた。
多くのクリップの中で、ドラムセットのないスチュワートは、大袈裟にばか騒ぎするようにして
踊りまくったり、(本来なら歌ってないところで)歌ったりしていた。
監督の演出だと思ってた。違うんだ。ロックスターのつぶやきを思い出して切なくなった。


信じられないことに・・・
今年、ポリスは再結成をして、ワールドツアーを行うのだ。
あの映画を観るとね、続きを見たくなるんだよ。
ポリスをまたやる、そう決めた彼らに流れた年月の、私的風景を見たい!!!!!
ライブは絶対に素晴らしいだろう。
・・・絶対に。
ポリスの皆さん、どうか2007年の東京に溢れる、歪んだ孤独をすくって、投げにきてください!


ポリス インサイド・アウトのHPはこちら→ http://thepolice.jp/indexp.html