それでも生きる子供たちへ

狂ったように忙しい日々、おわり。
今週末はやっと、心身ともにお休みです。
とにかく映画館へ行きたくて、最近のロードショーをみていたら
シネマライズで「それでも生きる子供たちへ」が公開中だった。
UNICEFプレゼンツ、社会の隙間でたくましく生きる子供達を描いたオムニバス映画で
スパイク・リージョン・ウー、エミール・クストリッツア、リドリースコット&娘スコット
といった無作為・あく強い・世界各国から選出された監督布陣。予告編観たときから気になってた。
しかし土曜に渋谷か、めんどくさいなぁ・・・暑苦しいなぁ・・・。とくだらなく悩んでいた私に
隕石落下級の行かなきゃ命令を下したのが、スパイク・リー監督篇のタイトルでした。


アメリカのイエスの子ら』


どうですか!
スパイク・リーが、『アメリカのイエスの子ら(Jesus children of america)』って
そんなのって!!!絶対素晴らしいに決まってるじゃないの!
今、観なきゃ。消耗した魂にやさしさを、たくましさを、それでも生きる力をください。
スパイク、私あなたの映画に癒されに行くんじゃない。
かすんだアイデンティティを叩いてくれるね?


一言でいうと、どの作品もとても良かった。
ストリートチルドレンを描いた作品が殆どで、でもそのたくましさや鋭さとおなじぐらい強烈に
子供の感覚、子供らしい憧れや愛情が表現されている。
すごく危険な窃盗を働いて、お金の使い道は遊園地や綿菓子だったり
大切な宝物は色鉛筆、かわいい人形。しがみつくように大切に扱うんだ。
少年兵士を描いたアルジェリアのメディ・カレフ監督の作品では、学校の教室を爆破テロの標的に
するのだけど、少年の学校への憧れがとても愛らしい形で現れる。
シティ・オブ・ゴッド」の監督、カディア・ルンドが見せたブラジルのストリートライフは
タフな子供の強烈な躍動感を映像で突きつけ、突っ走り立ち止まる。出色の映像表現だった。
そして敬愛するスパイク・リーの例の作品は、勿論ストリートチルドレンかと思いきや・・・
生まれながらにしてHIV感染していた子供の物語。
ドゥ・ザ・ライト・シングの頃だったら、率先してスラム街の子供を題材にしただろうに
こんなお話だなんて。いやぁもう・・・その途方も無い大きな傷をもって、生きることを受け入れる
ラスト3分、そのタイトルを思いながら号泣するよ。絶望のなかの希望の光を。


エミール・クストリッツアの狂乱のばか騒ぎ演出は、ファン全員納得(ファンじゃない人どん引き)の一本だし
神経症の大人が、子供がえりして自分を取り戻すという「大人の中の子供」について描いたリドリースコットも
手堅いが美しかった。
しかし!この中で、今読んでる人全員に好み不問で薦められるのは、意外にもジョン・ウー作品!
この強力なアジア人情・一本勝負!もうひれ伏すしかなく、スパイクと並び実質ナンバーワンでした。
孤独で愛に飢えた金持ち娘と、貧民街で健気に育つ捨て子の一瞬の出会いの物語。
短い尺の中で、両者の状況と心をしっかり見せ、そのささやかだけれど強く深いつながりと
出会いがもたらした運命の変化を描ききっている。
とにかくわかりやすい。ジョン・ウーがハリウッドで活躍するのは当然だ、と深くうなづいた。
ジョン・ウーの特徴である「きっぱりオレ節・ハッキリ感情表現・べたに大感動!」が見事に発揮された
ファンボロ泣き、今もういちど挽歌シリーズを・・・と切に願いたくなる一品でした。


それでも生きる子供たちへ、そして、生きてきた私たちへ宛てたタイムカプセルを
受け取るのだ。大人のあなたは何を思う、明日からまだ続く生をきっと思う。自身をみつめながら。
公式HPはこちら→ http://kodomo.gyao.jp/