1・2・3・4・5 僕の五感は働きづくめ

今晩は、XTCをずっと聴いています。
「Oranges&Lemons」はもう頭痛薬みたいなもので、調子が悪いとすぐ聴くけれど
きょうは久し振りに「English Settlement」を聴きました。


心の汚れは5秒で消し去れ、というのが私の中のひそかな格言です。
『5秒』の起源は「English Settlement」に入っている「Senses Working Overtime」という歌の詩。
サビの部分、
 1・2・3・4・5 Senses Working Overtime(僕の五感は働きづくめ)
こう心の中で歌って、5秒数えてるってわけ。
それは勿論、辛いときにこの歌に助けられた日から始まった私の勝手な呪文。
1・2・3・4・5は人間の五感を数えてるから、本来の意味は違うんだ。
だけどこの歌を聴けば、そうやって呪文のように歌ったとき、この5秒以降に広がる『明るさ』が
心の汚れを消すだろう、と分かるとおもう。
そしてこの5秒以前の音楽によって、自分の心が捕えてなかった世界にはっと気づくだろうって分かるとおもう。


五感を開放して世界を生きる その美しさを謳った歌
多少なりともひねくれた部分も含めて、この歌をそう捉えてた。
でも今夜あらためて歌詞を読んで、その捉え方は当たらずとも遠からずで
この歌は、悲しみを伴ったよろこびの歌だと気がついた。
読めば、ちっとも喜んでないじゃないかって思う人もいるかもしれないな。以下抜粋。


 この世界はサッカー場の型をした世界、僕は空中にボールを蹴る
 見て、聞いて、匂いをかいで、触れて、味を感じられる世界へ向かって。
 僕の五感は働きづくめ、何でもきちんと理解しようとしている。
 僕は、レモンとライムの違い、苦痛と快楽の違い、
 教会の鐘がやさしく鳴るのを感じることができる。
 道徳と犯罪の違い、どろと宝物の違いを見きわめようと、僕の五感は働きっぱなしだ。
 小鳥が、暗い空から落ちてくるかもしれない。
 ガキ大将は、きみの目の周りにあざをつくるかもしれない。
 汚れた氷の上でスリップするバスにでくわすとしても、だけど僕にはそれは、とても美しい世界
 本当に美しいんだ!


僕の五感は、感じたくもない苦痛の世界すらもきちんと捉えてしまう。
見たくないもの、嗅ぎたくない匂い、聞きたくない声や音、さわりたくないもの、口にしたくない食べ物を
捉え、善悪を正確に把握し、見極めようと働く。働きすぎる。
それらの傷をともなう事柄を「本当に美しいんだ」と歌うのは、そのとき感じる痛みを『通過させる』ことで
ただ同時多発的に人々が生きて、絶えず動き、回る世界のなかで起きた1コマとして受けるだけのこと。
それで私は、世界そのものの美しさを、変わらない五感で感じればいい。
するとその汚れた1コマは、たとえば生きる時間軸を横に広げるか、俯瞰するかして放っておくとふと気づく。
あっ 
私の五感が捉えるうちのほとんどがよろこびで、苦痛はたったこれだけか。
ずいぶん少なかったのね。実際のところ。
あら、とても美しい世界。
そういう歌じゃないかなぁと思う。曲を聴いてると、その音楽にはタフな無垢さ、山あり谷あり、雨風を抜けて
目を見開いて走ってるような気持ちよさがあるんだもの。


私は映像の仕事をしているから、こういうとき思う。
1・2・3・4・5分のVTRの中の1コマ 傷ついてたって気づかないほど微かなもの。
私は編集のプロだから消す。でも消せない場合もあって、それはどうするのがベストか、日々学んでる。
汚れやキズは目立つから、1コマでも映像全体にショックや誤りを与えるのよ、ほんとのはなし。人生みたいでしょ。

English Settlement (Lp-Facsimile)

English Settlement (Lp-Facsimile)