王と鳥/春のめざめ

今日はぽっかりお休みがとれたので、久し振りに『電車で』実家方面、立川シネマシティへ。
知らぬ間に、はやりのエキナカが・・・エキュートができていてビックリした。
駅の中、立川とは思えぬいいお店が沢山入っています。ホームから上がってすぐの本屋が
小さいけどなかなかやるなと思いました。


さて、シネマシティは日本で三番目に好きな映画館です。一・二は吉祥寺バウスと日比谷シャンテ
四がラピュタ阿佐ヶ谷ですから、そうとう上位ってわけ。つまりシネコンの中で一番好きです。
それは名画座的な側面があるのと、単館上映作品(の中でもいいやつ)がなぜか堂々とやるから。
今度はウッディアレンの「タロットカード殺人事件」が上映されるし(私はシャンテで見ますけど)
そして音がいいので、条件によっては同じ見るならこっちで・・・と遠征することしばしば。
きょう観てきたのは、ジブリ美術館推奨・海外アニメ「王と鳥」アンド「春のめざめ」を二本立上映。
どっちもずいぶん前に見逃して悔しい思いをしていたので、セットでやると知ったときには嬉しかった。


王と鳥」はフランスのTV局キャナル制作のアニメーション作品で、キャナルプラスについては
以前日記に書いたけれど、ビデオアートをこっそり局内で作って放映していた面白いTV局です。
フランスのアニメって一見視覚のポップさがあるんだけど、動くと・・・つまりスチルでなく映像になったとたんに
本当に独特で、詩的になるよなぁと思う。
先日やっと見た「キリクと魔女」もやっぱり『フランス映画』なんだよね。言葉すべてに繊細な意味を与えたり
カメラアングルと声の発する音階、セリフの現れ方が混ざっては、音楽みたいに感情的に観せる。
王と鳥」でまず驚いたのが、脚本がジャック・プレヴェールだったことです!あの鳥好き詩人が!
プレヴェールの事は、まさに去年の今頃の日記に書きました。よろしければこちらを〜http://d.hatena.ne.jp/akk/20061029
で、うちにあるプレヴェールの詩集は高畑勲さんの構成・編集なんですね。大ファンなんですねきっと。
原作はアンデルセンの童話らしいけど、そうは思えぬプレヴェール節が全開!で、台詞のなんと詩的なこと!
映像の奇妙なアバンギャルドさ、色やディテールの凄さに正対する、圧倒的な『台詞』の存在感。
この映画は流れる詩のような映画なんですよ。
物語はきちんと筋だっているし、映像の見せ場もとても多い、華やかで実験的で上手いファンタジードラマ。童話アニメ。
なのに、映像を俯瞰して捉えると、詩なのよね。
こんな映画初めて観た。映像は自由だ。いつだって忘れちゃう。ああ、ものすごい幸せなカルチャーショックを受けてしまった。
この映画には、手回しオルガンや蓄音機から、シャンソンが流れるという演出が所々に現れる。
例えばその歌詞と、前後の台詞、構内放送の声といったガヤまでもが、一貫した世界を構成する『詩』なんだよ。
素晴らしい。詩でできたアニメ。きっとそうする意図は、初めはなかったけど作っていくうちに自然に出来てしまったんじゃないか
という気がする。
それからこの映画は音楽が本当に美しく、ラヴェルかしら?と思うような超綺麗なピアノやオーケストラ、そしてシャンソン
完全にやられたので、サウンドトラックを探してみようと思います。
そしてプレヴェールの詩集をまた、生活のなかに置きました。今、この部屋で読んだら、去年とは違う読み方をするんだろうと思いつつ。


もう一本「春のめざめ」はロシアのアニメーションです。
完全に油絵の印象派、モネルノワール等等の画風で「アニメしている」という男気一本な映画でした。
画風は女性的なやわらかさなんだけどね、それもチラシのスチルの印象だけのこと。
映像はぐぉんぐぉんジェットコースターのように渦巻いて止まりません。
初恋の淡い思い出が印象派のやわらかいタッチで・・・と思っていたらとんでもない!
渦巻くのは主人公の男の子の、女をめぐる煩悩!愛だと思ったら憧れだった。愛だと思ったら恋のかけひきだった。
愛だと思ったものは、ただの幻だった・・・。単純だけどその情念の渦巻きかたが、すごい。油絵のかもす重さが炸裂。
印象派の「はっきりしないけどぼんやり綺麗、そしてときに光線が乱反射するほど、世界が止まるほど美しい」
絵画は、その究極に美しい瞬間をカンバスに焼き付けて永遠に持続できるけれど・・・。
現実は動く。印象派の絵画が動いて『時間』を得たとき、そこには油絵の『重さ』幻想と現実の渦巻きが生まれるんだな。
そんなことを思いました。
恋は印象派 愛は・・・なんだろう。なんだと思う?
写真かな?

王と鳥 スタンダード版 [DVD]

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春のめざめ [DVD]

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