「ここではないどこか」の本

ずいぶん遠くまで旅をして、帰ってきたような感覚です。
週末に読んだ本、ここではないどこかへ行ってきた。

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

雪沼とその周辺 (新潮文庫)

ちょっと前に図書館で借りて、読み終えぬまま返却したのがたいへん心残りでつい買っちゃった。
買ってよかった・・・。私には一生ものの本です。
雪沼という地名の、架空の寂れた田舎都市のものがたり。
寒い日のしんとした静けさ、少しぬくもりながら息が白く、穏やかに生活を営む冬。
まっすぐに美しい文章で、街と人の風景を伝えてくれる。私、堀江さんの書き方大好き。
池澤夏樹さんや日野啓三さんの肌触り、それに最近ようやく読み始めた吉田秀和さんの音楽評論集
(そもそもこの人の特集番組に、堀江さんがインタビュアーで出てたから借りた)
音楽についての表現のしかたが、とても似てるんだよ。
雪沼は、北海道の旅、とりわけ余市を思い出した。また北海道に行きたいなぁ。
そしてあとがき文は・・・池澤夏樹さんによるものでした。嬉しかった。
という、はなし

という、はなし

このごろ、フジモトマサルさんの絵が気になってしかたなかった。
もうそろそろ買ってみよう、と思ってなぜかこの本を選んだ。
「読書」をめぐる短編集(というか絵本かな)で、吉田篤弘さんの文章とフジモトさんの絵が
ぴったりひとつの情景を描いているのが素晴らしい。
この情景というのが、ほんとに「ここではないどこか」を目にしているようだし
映画のワンシーンみたいに体感する。だから旅しているような錯覚が起きて、夜行列車や公園、喫茶店
病院・・・とさまざまに読書してる動物の絵姿に、他人とは思えない愛おしさを感じる。
そして、ほんとうに色んなところへ(本を懐に)旅してきた感じがするんだよ。
愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

ブローティガンはどこかをつねに彷徨っているね。
長編だけどセンテンスが短い、断片集でできた小説だから、このところ電車の中で移動中ずっと読んでた。
二駅で乗り換えて〜なんてことに集中力が切れることのない、つぶやきだらけの書物。
このお話はロードムービーだから、旅してる感があって当然なの。だけどなんだか、どこに移動しても
移動してなくても、主人公の目線はストレンジャー。そんな感覚でわたしも電車に乗りながら、
過ぎていく風景や目的地、私の目の前の人たちをみる。
「ここではないどこか」?
矛盾したこの言葉が視界に現れているのは「ここ」と「どこか」が同時にパラレルしているからだね。
世界はどこまでも広いのなー。


今、萩尾望都さんの「ここではない★どこか」シリーズを読んでいるから今日はこんなタイトルに・・・