恋愛映画その他の亡霊について

きょうはガルシア=マルケスのぱくりタイトルです。えへ。


先日観たばかりなのに、またウォン・カーウァイの「恋する惑星」を観たくなってしまった。
観たくて観たくてたまらないので、ついにDVDを買ってしまった。
そしたら今日は結局、この映画を計3回観た。
あいだに2本の恋愛映画を観たんだけど、やっぱ、ってもう一度観た。
なんかとても元気になった。


その他の2本は「エターナル・サンシャイン」と「きみに読む物語
「エターナル・サンシャイン」は私の苦手なあの・・・「マルコビッチの穴」なんかの脚本家だから
警戒して観たんだけど・・・やっぱりとてもつらいシーンがちょこちょこあってね。
失恋した主人公が、恋の記憶を全て消すっていう物語だけど、幸せな記憶が消えていく苦しさと
苦しむ主人公の外の世界の冷酷さが描かれていて、やはりマルコビッチ的にとても痛い。
なんかもう、残酷でやるせない感覚が強烈で。
ただ外の世界は外の世界で、主人公との関わりからみると冷酷だけど、平行して悲しみが潜んでいる
という逆説的なあたたかさがあるの。痛いけど悪くない、むしろいいお話よ。でも・・・
主人公の記憶が消えていくさまは、見ていて本当につらくてこわくて、ミシェル・ゴンドリーの映像表現の
凄さがいやってほど伝わる。あれはもう、ホラーだね。「シャイニング」級の精神的ショックを与えられて
トラウマになりそうでした。脚本で書かれた『心の痛み』を映像で増幅してみせてくるんだから。
だからね、諸手をあげて「大好きな映画」とはいえないんだけど、よくできてる作品でした!とショックで
ゼイゼイしながら言うようなものだったな。
記憶力がよくて失恋のトラウマを背負ったままの人や、もう今すぐにでも忘れたいと思う人は
観てみるといいでしょう。こっこんな思いするならこのままでいいや・・・と思うことうけあいです。


きみに読む物語」はひっそりと公開していたから、あまり知られてないかもしれないけど
ジョン・カサヴェテスの息子ニックの監督作、アンド母親のジーナ・ローランズが出演しています。
私はカサヴェテス大好きっ子ですから、当然のようにジーナ・ローランズも大ファンです。
息子は地味だけどいい映画撮ります。やさしいけど甘ったるくなくて、強い。
これは、ど純愛映画です。ねたばれするからあまり書けないけど、認知症にかかって記憶をなくしていく
ジーナに、ひとりのおじいさんが物語を語り続けるんです。何度も何度も、同じお話を。
ひとつの恋のおはなし。
べつにセットで借りたわけじゃないのに、「エターナルサンシャイン」では記憶を消したい主人公。
こちらは、記憶を取り戻させたい主人公。
どちらの映画でも、出会いから始まって、恋愛の天国とどん底が描かれる。
なんかね、過ぎた時間は亡霊のように、現れては消えていくんだなってぼんやりした。
今生きている時間と平行して、過去の記憶や感情はふらふらとさまよっていて、
今、過去を繰り返して生きてる、生きたい、生きてしまう。記憶が消えないかぎり続くそれは、
ひとを幸福な気持ちにもするし、悲しみの底へつきおとしもする。
もう会えないとわかっている人に恋をし続けることだってできるし(うちの母親がそうだ)
面白いことを思い出して、たのしくない今を笑うこともできる。
ヒトが捉える『今』の時間、幾つの世界が同時にすすんでいるんだろう。


話を元に戻すと「きみに読む物語」はジーナ・ローランズが素晴らしいです。
これを観たら、彼女の主演作で一番好きな「オープニングナイト」をもうれつに観たくなった。
DVDで出てるから、こちらもよかったら見てみてください。

オープニング・ナイト [DVD]

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もちろん監督はジョン・カサヴェテスです。自ら出演もしています。
ラストシーン、ジーナとカサヴェテスの舞台上でのやりとりは、映画史に残る『ラブシーン』です。ほんとです。
あんなにリアルで素晴らしい愛の表現って、滅多に出会えないよ。全然甘くないから。ビックリしてください。


さて、そんなわけで「恋する惑星」に戻ります。
なんでこんなに、何度も観てるんだろう?
と自分でも不思議に思います。でも、きっと居心地のいい映画なんでしょう。今の私には。
惑星の一地点、悩んだり悲しかったり、よろこんだりしている同時進行の(誰かの)ロードムービー
すぐそばに感じるこの映画が。
恋する惑星 [DVD]

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しかしウォン・カーウァイの映画って今、軒並みサントラ廃盤なんだよね!びっくりした!