あけましておめでとうございます。

2008年が始まりました。
昨年末は31日の最後まで、音楽のもたらす様々な瞬間が一気に押し寄せて
なんだか感動し続けでした。
ライブやレイブにいたわけではなく、旅していたのでもなくて、どこにでも転がっているお正月。


どこにいて、なにをしていても、音楽は出会うべくして耳に届くものだとおもう。
その音楽は、私が生まれる前に演奏されていたものかもしれないし
届く瞬間より以前に、何度も耳にしてたのに『聴こえてなかった』のかもしれない。
CDショップへ足を運び、買い求める『聴きたい』音楽のなかにも
10年後の或る日、食器を洗いながら、突然涙が止まらなくなる音楽だってある。
曲名も演奏者もわからない、或る夜ふけにDJが気まぐれでかけた音楽が
今でも、心のどこかでわたしを支えてる。
それらは偶然のルーレットのようでいて、そうでもないんだろうな。


年末、読んでいたリンドバーグ夫人の「海からの贈り物」のなかで
ひとりになり、自分自身と向き合うことの大切さについて書いていた。心を満たすために。
自分の心を調律するために。豊かにするために、孤独になる必要がある。
純粋に孤独の時間をつくることは、今の私達にはむずかしい。でも今だからこそ必要なのだ。
それが無くなれば、ただ日々を消耗して、心の泉は涸れていくのだと。


孤独を、暗雲モンスターのように恐れているひとはたくさんいる。
孤独と悲しみが、ともに訪れる死神のように感じるトラウマを抱えたひとはそう恐れるし
孤独=寂しさ恥ずかしさと直結させるような、メディアのステレオタイプな短絡的表現の
積み重なりが生んだ、被害妄想かもしれない。
「海からの贈り物」を読んでいたら、それらは何て歪んだ孤独なんだろう、って思った。
かなしくなるくらいに歪んでる。


その翌日、実家へ帰った。
母親が、テレビ番組の録画ビデオをわたしに見せた。
それはTMネットワークが再結成して、レコーディングするのを追ったドキュメントで
ささやかで、とても感動的な内容だった。(これについては、改めてまた書くかもしれません。)
私も母親も、昔はよくふたりで、一緒にTMネットワークのライブに行っていた。ファンだった。
母親が好きだったから、私のお小遣いを削らなくても、うちには当たり前のように
TMネットワークのレコードやレーザーディスクが揃ってた。
2007年の『TMネットワーク』を見ながら、母親が「またライブに行きたいね」と言った。
あたしはその願いをぜったいに叶えてあげる、とこっそり心に誓った。


久し振りにTMネットワークが聴きたくなった。あ、お母さんもそう思ってたのよ。
信じられないことに母親は、15年以上前にカーステレオでずっとかけていたカセットテープを
ひっぱりだしてきた。TMベストってマジックで書いてあるやつ。もちろん母のお気に入り編集盤だ。
・・・それ、まだ聴けるの?
がちゃん、と音をたてて動き出したカセットテープから流れた音楽は、まるでタイムカプセルのように
そのままの姿で現れた。あたしの一番好きな歌だった。
イントロから最後まで隅々と、いまのあたしに流れ込んできて・・・あっと思った。
その歌は「ナーバス」といって、こんな歌詞だった
So Nervous So Nervous Got Nobody
きみはひとりだから
Get Changing Get Changing Start Chasing it
きみはやさしくなる


そのあと続くのは、きみはひとりじゃない、なにも迷わないで という言葉で、
私は当時、この言葉のやさしさは分かったけれど、「きみはひとりだから きみはやさしくなる」の
意味がわかんないでいた。
その後に「きみはひとりじゃない 何も迷わないで」が続く意味も、理解できてなかった。
そのまま放っておいて、この歌そのものが日々の音楽のなかに埋没して、いま。
ああ、そうかって。リンドバーグ夫人が書いていたことと同じだ、とわかって。
孤独は恐れるものじゃない。とこの歌はわかっていて、伝えようとしている。


この歌に描写されているストリートキッズ達は、孤独を悲しく、虚しくしか感じられないの。
孤独を避けて、避けきれずに大きく傷をつく。ひとりで、ひとりになったときにのしかかる悲しみを
恐れてまた街をさまよっている。
私は彼らの気持ちがとてもよくわかる、誰だってわかると思う。そして今では同時に、彼らを
安心させてあげられたら、と思う。
この歌を何度も繰り返し聴いていた中学生のころ、私は意味が半分もわかってなかった。
だけど、音楽自体がほんとうに強くやさしく響いて、何度も励まされた。
潔く格好いい、私もこんな格好いい人になりたいとおもった。それが或る中学生の支えになったってわけ。


ドキュメント番組のなかで、小室哲哉さんは『再結成』する意気込みについて、こう言ってた
「正直いって、売れなくてもいいの。売れる売れないじゃなくて、伝えたい!
今の時代、どれだけ届くか・・・わかんないけど伝えたい。もうそれだけ。」
感動したよ。彼らの思うように、伝わればいいと願ってる。


まさかリンドバーグ夫人とTMネットワークが同じことを表現しているなんて、私は知らない。知りえない。
だからこの出来事は偶然のルーレットのようでいて、そうでもないんだろうな。と思うの。
そんな体験だらけの年末年始でございます。来週から会社に行くなんて信じられない・・・。
会社行ってる場合じゃないほど私も「伝えたい」でいっぱいなんだけど・・・。がんばろう。
2008年もよろしくお願いします。

海からの贈物 (新潮文庫)

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GORILLA

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