ビンに入った手紙を大事にしていた4万人の人々

ザ・ポリスの再結成ライブへ行ってきました。
東京ドーム、今夜はソールドアウト。4万人だって。信じられない。
私は小学生のころに聴いていたから、あれからもう20年以上も経つのに。
彼らの再結成は降って沸いたような出来事で、スティングはすっかり有名人だし
スチュワート・コープランドはその後もピーター・ガブリエル周辺と一緒にいたり
アンディはゴメンわかんない。。けど、それぞれが自立して音楽してるのに
やっぱり、再結成は降って沸いた突然の出来事だっていう感覚はぬぐえなかった。今日まで。
メンバーがいかに活躍しようが、ポリスとは全く別な感じがしてた。
つまりポリスは特別だったのかな、と思う。ひとつのバンドとして。
だから、20年以上経った今、東京に、宇宙人襲撃のように異物として、
タイムワープしてきた80年代のバンドがそのままの姿でやってくるだろうって
私はまったくSF的に待っていた。
ポリスは今に至るまで数え切れないほど聴き続けている音楽だし、
私の世代でライブを観ることができるなんて奇跡で、単純に言えば物凄く嬉しい事。
なのに、たとえばザ・フーやクイーンの再結成を待つ感覚とはまったく違う。
同じ東京ドームで観るローリング・ストーンズとも違う。
歳をとったポリスの面々の写真もみているのに、やっぱりポリスはなにも変わらない姿で
私達の前に現れるって信じてた。
私自身にも20年以上の時間が過ぎて、きょうの朝。チケットを見ながら、
これはメッセージ・イン・ア・ボトルで、ビンに入ってた手紙だなって思った。
随分前に拾って、その頃は子供で意味もわからないまま小箱にしまいこんで
そのうち英語が分かるようになって読んでみたり、何度も読み直したりして
きょう持ってくのだ。手紙もらったよーありがとう! とポリスにみせるための。
・・・なんてことを思った。


はたしてビン入り手紙は、4万人ものもとに届いてたのだ!
明日もあるから、もっと、それ以上。来られない人々も入れて、もっともっと。たった日本で。
あたしはそれだけの数のお客さんを目の当たりにして、ホントにホントにびっくりした。
ライブはほぼ時間通りに始まり、たぶん95%以上の人がすでにその時間に揃ってた。
東京ドームのライブでこんなことありえない、って驚いた。この集まりのよさ・・・。
みる限り、やかましく騒いだりするつもりでライブに来てた人は、いなかった。
ただポリスを見に来た人ばかりだったように思う。なんか大事なものを握りしめながら、会いに来た。
そんな感覚が会場全体から伝わってきた、ポリスの音楽を追体験したい欲望よりも、ただそれだけの。


そしてもっと驚いたのは、このエンタメ過多時代に、ポリスが本当にシンプルな舞台装置の中で
広い広い舞台の上で、たった3人だけでライブをしたことだった。
なんて潔い、って思わずにいられなかった。そして彼らはそのまんまだった。
違ってるとしたら、スティングが長いエンタメ生活で身につけた、たまに舞台の端から端まで
あるいてみせること、ぐらいなんじゃないかな?
彼らはすぐ、真ん中のスチュワートのドラムセットのそばに寄り集まっちゃう。
東京ドームのステージ、横長のひろい舞台の上で、中央に集まって。彼らにはスチュワートのドラム
さえ納まれば、場所はどこでもオッケーなんだろうね。
ただお客さんの数の都合で東京ドームになっているだけだ。そう思った。
それぐらい、ポリスのライブはライブハウスのように身ひとつな感じがした。
それは素晴らしくて、カッコ良かった。観られた幸運に感謝するぐらい!


映画「ポリス インサイド・アウト」を観たら、なぜ今ポリスが再結成をしたのか
不思議でならないと思う。結成30年記念だって言うけれど、だって彼らはいままで、
結成10年、15年、20年・・・ずっとノーを言い続けていたはずだから。
今までの間、再結成がずっと求められているのは、突然秘蔵のライブ盤が発売されたり
DVDが出たりすることでわかる。時々起こるリバイバル
ポリスはシンプルで、どっちかというと地味で華美でなく、だけど今でも普遍的に、響く。
コミュニケーションがひどい歪みをみせている今こそ、必要な(孤独と向き合うための)音楽だし
今、こうやって再び現れてくれたことを、とても嬉しく思う。
けれどなぜ今?


それで、アンコールで「So Lonely」を演奏したときに思ったこと。
私のロマンチックな仮説かもしれない。けれど、読んで。この歌でスティングはキーを下げて歌いはじめた。
私はこの歌がものすごく好きなので、ビックリというかはじめショックを受けてしまった。
え、なんで・・・。そのときやっと、スティングの声がうまく出ていないことに気がついた。
そういえば、そんな噂を聞いていた。もしかして、スティングをライブで観られるのは最後かもしれないって。
年月は体を衰えさせるし、シンガーが声を失うのも当然で、しかたない。
けれど本当に素晴らしかったのは、スティングはとても気持ちよく笑顔で歌ってたことだった。
凜とした姿と、笑顔と、そして他の二人の思い切り嬉しそうな笑顔。
3人がまた真ん中に寄り集まる。カメラはどうやったって映るドラムのスチュワートを捉えていて
何度も見切れるアンディ・サマーズを映す。この結束力は物凄くて、だからスティングは笑顔で歌っている。
3人は夢中で、とても嬉しそうに、楽しそうにライブしてた。
ああそうか、とその時思った。スティングは歌声を失う前に、もういちどポリスをやりたかったんだ。
きっとただそれだけだ。
素敵じゃないか。

グレイテスト・ヒッツ

グレイテスト・ヒッツ

私これ聴いてないけど、来日にあわせてなら乗りましょう。これでほぼ網羅です。
行けなかった人知らなかった人、聴いてください。今だって手紙入りのビンは受け取れるからね。