ブラザーズ・クエイの幻想博物館

このところ、日々仕事にまつわる気遣いに振り回されていたので
知らぬ間に無自覚に、心がやられていたことに気づいた休日。
肉体的な疲れがとれると、う、認めたくないけどストレス溜まってたのね。。
昨日は突然、うぁあーと部屋の大々的なレイアウト変えして、気分は落ち着き、居心地も良くなった。
さて、次は核を取り戻すこと。
アイデンティティが霞んだら迷わず映画館へ行くけれど、特によく求めるのは実験映画で
これはすごく疲れてるときにたこ焼きや、ラーメンやトムヤムクンを心底求めるのに似た
とても強力で即効性のあるエネルギーチャージになります。
映像をつくるのに、丸く治めて色々気を遣って、妥協したり無難にする事を受け入れたり
お金がどうこうなんていう論点で闘わなきゃいけなかったり・・・そういうこと
もう、ぜんぶ、ぶっとばしてくれ!
純粋に、爽快に。実験映画はいつもあたしにこう言う、「もっと正直に」


ちょうどイメージフォーラムブラザーズ・クエイの回顧上映特集をやってた。
やったー!やったー!ろくに見ないで行きました。
ブラザーズ・クエイはアートアニメーションの部類に入る兄弟監督で
ヤン・シュヴァンクマイエルと繋がりが深い、人形アニメであり、尖ったアートで、耽美で幻想的な、
ときにグロテスクな毒毒アニメをつくる作家です。メガヒット作は「ストリート・オブ・クロコダイル」!
今でこそアートアニメはおしゃれに広く受け入れられて市民権を得つつありますが
私が学生の頃は、まだ秘密結社的だった実験映画すなわちイメージフォーラム系の入り口として、
洗礼のようにこの映画を見せられたものでした。みんな夢中になってたよね。私もね。
今日みたのは、有名人特集「ストラヴィンスキー:パリでの日々」「レオシュ・ヤナーチェク
ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」の3本立て・・って、有名人といっても偏っててゴメンね!
アルケミストたちの形而上的遊び部屋』という粋なタイトルがつけられたこの回は
残念ながら今日で上映終わりなんだけど、2本は初見だしかなり楽しかった!です。


ストラヴィンスキー」と「ヤナーチェク」はともに作曲家。
ストラヴィンスキー」はぺらぺらの写真を、スクラップみたいなボディの人形に貼り付けた
アイコラ的な表現で。ジャン・コクトーとロシアの軍人(名前忘れた。。)がストラヴィンスキー
おうちに来て夜のパリに遊びに繰り出すっていうコメディでした。
自動演奏ピアノの作曲を執拗に続けるストラヴィンスキーと、自動演奏ピアノを演奏する風景(実写)が
ぎょっとするタイミングで飛び込んできたりして、愉しくってしょうがないの。
しかもこのピアノ曲ってのがものすごくて、10人いないと演奏できないものって言う。
超音数多い超変則的メロディで、このストラヴィンスキーの実験ぶりも凄いなーとおもうのです。


ヤナーチェク」はやはり本人の写真を使って、アイコラ人形で画面に登場。
ヤナーチェク以外はみんな非写真で、古めかしいすごいデザインの人形。
幾つかの音楽を断片的にイメージでみせていく構成で、この映像の冷ややかさったらなくて、
ここはどこ?古いロシアの地下室?って感じの風景で。もう本当に美しくて。
その中でぺらぺらのヤナーチェクが笑顔で舞ってるものだから、たまらなく映像カタルシス。。
音楽が放つ異様な熱が、ちいさな世界で表現されてて最高でした。


で「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」見るの3回目ぐらいなんだけど、やっぱりぞわっと鳥肌。
シュヴァンクマイエル役の人形は書物で構成されてて、顔には本人の写真ではなく、まったく別人の
宮廷画家の写真が時折オーバーラップで浮かび上がる。で、弟子の子供人形に魔術的な業を伝授するのだけど、
これもう最高で、頭が割れて綿が飛び出したり、手術みたいな魔術をはじめるしで・・・どっちのファンも熱狂または爆笑です。


昔は眉間にシワよせてうん〜・・・とこむずかしく見てたけど、今みるとクエイ兄弟はどこかユーモアがあって
芸術的センスのシリアスさは根底にあるけど、もっと力が抜けている感じがしていいなぁと思う。
来週から始まる新作「ピアノチューナー・オブ・アースクエイク」は実写映画。
なんと、というか当然というか(モンティパイソンの!)テリー・ギリアムが製作総指揮だそうです。
シュヴァンクマイエルほど猛毒でなく、毒毒ファニーなクエイ兄弟
言われてみればギリアムのセンスにとっても近いわね!絶対観に行きます。


では、しばらく上映ないだろうから、お土産に。
YouTubeで見つかった「ヤナーチェク」1/3リンクです。
http://jp.youtube.com/watch?v=W65_8lyTwUo
続きは各自見るように。私はこのあと2/3〜3/3がもうれつに響きました。
これ、あとで癒し映像としてとっておこう・・・。