傀儡の獣

久し振りにお芝居を観に行きました。
東京ハートブレイカーズの「傀儡の獣」という舞台です。
タイトルはごついけれど、さりげなく暖かいお話でした。
どんなかっていうと、着ぐるみショーの舞台裏での物語。


その場に人があらわれて、おもむろにお芝居がはじまる。
それでお芝居と同じようにして、おもむろに音楽がはじまる。
それはつなぎ目のないセッションライブみたいで、とても自然に
けれどよく考えてみれば、けっこうすごいことしてるのね、と思う。
お芝居は、日常のひとコマを切り取ってみせているようだし
そこに音楽の演奏が入るっていっても、ミュージカルてわけじゃなく
「おもむろに」としか言いようのないお芝居の延長線上なのだった。
全体にさりげないセンスのよさが感じられて、うーんプロの仕業、と
とてもおもしろく思いながら見ていました。


着ぐるみというと、わたしはいつも、頭のがっしり感にくらべて身体のやわな感じが
心もとなく、なんて無防備な「人間」なんだろうと思っていました。
足を踏まれたらさぞ痛いだろうとか、握手したときの温かみ・・・
記念に一緒に写真を撮るときも、これを被って写真に映るというのはどんな気持ちなのか、
といつも気になりました。
がっしりした頭の中で、その「人間」ははいチーズで笑っているのか、
すんごい無表情だったりして。
だけどきっと、そこで頭を脱いだら、わたしはどんな顔であれ衝撃を受けるに違いないのです。
醒めた生意気なこどもでも、そこに微かな「非現実」を宿してみている。
現実にそこに無防備に包まれた肉体があり、動いているのにもかかわらず。


こんなお芝居のような日常がどこかにあるのを、大人のわたしは知っている。
だけどやっぱり街で着ぐるみを見かけると、「着ぐるみの人」として捉えていて
目の前で頭を脱がれたら、仰天するに違いない、のです。


東京ハートブレイカーズ
http://www.tokyoheartbreakers.com/