22万羽の鶴がゆく

あれは9月だったか、母さんが折り紙をもって家にやってきた。
大好きな韓流スター、イ・ジュンギ君の新しいドラマがはじまる。
高視聴率を祈願して、ファンサイトの呼びかけで、日本のファン達みんなで
千羽鶴を折ってジュンギ君に届けよう!
という自主活動を行うという。


わたしは母さんといっしょに鶴をおった。
鶴をおるのはずいぶん久し振りのことだったけど、思い出したらとまらない。
没頭したし、千羽鶴用の折り紙はとてもちいさく、色がグラデーションになるように
しまわれていることとか、鶴さんは羽根を開かないでひもを通すんだとか、
やってみないと気づかない幾つかの事柄に感心したりした。
母さんの夜なべもあって、結局うちからは350羽が飛び立った。


それから数ヶ月、
その新しいドラマの相手役の女優が二度も降板して、設定が変わったり
リテイク続きで、初回オンエアが大幅に遅れたりといったいろいろなアクシデントがあって、
なおかつファイティンする撮影現場のげんきなジュンギ君のもとに
先週、日本から大量の鶴さんが舞い降りた。
全部で22万羽。
信じられない。22万羽が飛んでいったのだ。撮影現場にトラックで運ばれてきたっていう。
ただの紙がひとつひとつ愛をこめられて鶴になった、その原動力がきみだったのだ、ジュンギ君。
きみの元気の源をすこしでも増やせるように、日本から大きいエールが届くように
ファンたちが自主的にそうして思いをのせて、鶴さんを飛ばした。
22万羽の鶴さんたちは一斉に、「ジュンギ君!ファイティン!」と鳴いている。
ばさばさ、ばさばさ。ジュンギ君、ファイティン!


そしてこれが、つぎつぎと舞い降りる鶴さんにご対面したジュンギ君の映像。
http://www.youtube.com/watch?v=rOUh3dajDDE&NR=1
すごく素でおどろいて、感動している。それでこんなことをいっている。


日本のファン達がひとつ、ひとつ折ったんだよ。
僕は知らなかったよ・・どんなに大変だっただろうに・・・
僕はお棺に入る時に持って入ります。生きた生前の思い出に・・・とても感謝してます。
本当に物凄く感動してます。


その鶴さんのひとつひとつに、たとえば鶴の内側にちいさなメッセージが書いてあったりすることを
きっとジュンギ君は知りようがない。
それをほどくことなどないだろうし、かれのことだからいつかほんとうにお棺にもって入るかもしれない。
そのとき、鶴さんに込められたたくさんの愛に抱かれて、ただ幸福にいてくれたらうれしい。
ほんとうに、これを折って贈ったファンたちの誰がこんなコメントを予想しただろう。
たぶん、誰ひとり予想してなかったんじゃないかな。
すばらしいコミュニケーションだ。


わたしは鶴さんに高視聴率祈願と、それにジュンギ君への感謝をのせて飛ばした。
母さんをげんきに、幸福な気持ちに、あたたかくたのしませてくれてありがとう。
げんきを与えてくれてありがとう。わたしにも。


すこし前にTVでやっていたジュンギ君の時代劇「イルジメ(一枝梅)」で
ジュンギ君は激しい怒りや憎しみに襲われても、けっして人を傷つけなかった。
剣はひとを傷つけるためにあるのではない、という死んだ父の教えを全身で守るすがたをみて
わたしはわたしの武器である「言葉」でけっして人を傷つけない、と思った。
知らず傷つけてしまうことは防ぎきれないとしても、けっして意図をもって傷つけないということを
わたしは誰に、いくら悪意ある傷をつけられたとしても、たたかう意志を胸に抱く。
それを、めちゃくちゃな感情に乱されても忘れないように。
わたしの携帯ストラップには梅の花がついている。
それをみると、一枝梅という名でジュンギ君がファイティンする姿をおもいだして
げんきになるのだ。

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