金沢にて〜泉鏡花、美しい橋、茶屋街

akk2010-08-29

旅の二日めの朝はとても幸福。
目覚めて、ここが金沢なことのうれしさといったら!
移動が滞在へと変わる二日めの朝、まっさらのここでなにをしよう、というわくわくが
たぶんわたしの旅の一番の快楽だと思う。いつも。


きょうは泉鏡花をめぐる冒険の日。
そもそも泉鏡花を読みまくっているのは、じつはここ2ヶ月ほどのことなのです。
仕事でがんじがらめのくるしい日々に、ふと手にとった泉鏡花。出会いの一篇は「義血侠血」!
まるで、空からの贈り物のようだった。
なんてかっこいい!言葉のひとつひとつがいさぎよく、縷々と流れるさまが本当にかっこいい!
わたしは幽玄や耽美のイメージを抱いていたので、泉鏡花の容赦なきストレートスマッシュに驚愕して
うっとり。「憧れの鏡花さま」と崇拝しはじめたのでした。


朝いちばん、開場時間に能楽美術館へ。
お能の基本、舞台のあの人は何してるの?といったわたしのようなど素人にやさしい常設展示と
企画展示「泉鏡花と能」展をみる。
「歌行燈」を中心に、お能ネタ原稿や、物語にでてくるお能の演目の衣装展示。
それに、鏡花のお母さんやおじさんがお能の演者だっていう「影響」の解説。
お能と鏡花がつながるなんて、はじめはまったく気づかなかったのだけど
言われてみればそのとおりで、鏡花の作品はお能の筋書きみたいだ。
容赦なく情念を軸に展開し、手厳しく力強くばっさりいく、その言葉の潔さ、うつくしさ。
それはお能の面や衣装のうつくしさと、演者の情動という表現の生む力強さと、同じようなバランスでできている。
そのように思った。やっぱりきのうお能を見てよかった…見てなかったら受け取りかたが違ってただろうとおもう。


旅の大本命、泉鏡花記念館へいく前に、おなかがすいてたまらないので近江町市場へ。かにえびまぐろ海鮮丼を食す。
すると近江町市場から記念館はあんがい近く、思いがけず近道できた。本能はあなどれない。
泉鏡花記念館」というバス停名をみるだけでうれしくて、鏡花さまはさすがに名所扱い!と誇らしくなる。
生家の跡地に立てられたここは、きれいな長屋造で、入り口がとても控えめ。
誰かの家みたいに地味で、ちいさく「開館中」と書いた札がぶらさがっているの。鏡花っぽい。
企画展示はこちらも「泉鏡花と能」展、それに愛あふれる常設展示。企画展は能楽美術館と被りもあったけど
すこしでも多く鏡花空間を堪能できればしあわせなので、まったく問題なし!
書簡やスピーチの下書き、書き直しまくった原稿。ぐしゃぐしゃっと消してあるその下の文章まで
気になって読もうとがんばる。なかなかむずかしいけれど。
感動したのは、鏡花の旅行かばんやぞうり、お気に入りの置物といった愛用品の展示!ってほんとミーハーだけど
あの素晴らしいひとが生きていた証拠です…ひしひしと胸にせまるものがあり。
鏡花は足がちいさい。足だけは、わたしのほうが大きいかもしれない。


ここの凄いのは、自力で鏡花の入手困難ものをあつめて出版してしまったり(ここでしか買えません。)
すばらしく内容の濃いい展示カタログを作ったりしていること。
とにかくグッズ売り場の質の高さがはんぱじゃない!オリジナルDVDや、お香皿、鏡花にちなんだお守り、
もちろんすべての入手できる鏡花本はそろっており、絶版のものは自由に読んでいい図書館コーナーもある。
置いてある本を読んでみたけど、なんかすごい線ひいてあるし(笑)これはファンの仕業かな!?
線ひきには参加せずとも、私もファンですから、ここぞとばかりに色々買いました。
いまホテルの部屋で、鏡花のお香を焚きながら書いてます♪


さてホクホク顔で大きな紙袋を抱えながら、続いて近隣にある鏡花ゆかりの地めぐり。
ここからは絵日記でいきますよ!

記念館を出てすぐ裏手に下ってゆくと、うつくしい浅野川がきらきらと広がっています。
この川ぞいの主計町茶屋街の通りは「鏡花のみち」。古い木造の橋がいくつも架かっている。
きっと当時もほぼこんな具合の茶屋街とうつくしい川。こどもの鏡花や思春期の鏡花が横切ります。

木造の橋。木はふるく白く、しっかりした造り。78年に工事をしたらしいことが書いてある。
ここの橋あたりを舞台にした「化鳥」と云う物語は、自費出版文庫に入っています♪これから読みます!

大傑作「義血侠血」の主人公、女水芸人の滝の白糸の像。
そばにある箱をさわるとセンサーで水がふきだして水芸する、鏡花作品への愛いっぱいの銅像〜!!!


ほんとうは卯辰山の鏡花巡礼コースもめぐるつもりだったのだけど、かなり遠い…
がんばってあるいてはみたけれど、とにかく暑くてたおれそうになってきたので
定番のひがし茶屋街へ避難することにしました。

初めて中のお茶屋に入り、抹茶アイスとコーヒーをいただいた。お茶屋っていうかカフェなのね。
ついでに金箔のお店「箔座」に入り、ついつい現地アクセサリーを買ってしまいました。
いい色だな〜と思ってみていると、金箔とプラチナを混ぜた世界初のものだっていう。
金箔のみのアクセサリーも明るくて鮮やかで、デザインもとてもすてきなものばかり。
一期一会のデザインと、お手軽価格にやられました。金沢で現地アクセサリーを買いたい人は超おすすめです。


泉鏡花記念館で、展示のはじめに「美しいひと」というテーマの空間があります。
これは「天守物語」のきめ台詞、「美しいひとよ泣くな。」からきていて、
美しいひと」がどうしようもなくかわいそうな目にあうとか
どうにもならないと行き止まる姿への慈しみが、鏡花の文章や台詞にははっきりこめられている。
…わたしも美しいひとになりたい。
というわけでアクセサリーを買ったっていうのは、こじつけっぽいけど本当のこと。
他愛ない装飾品だとしても、それが日々のきらめきにつながればすてきだ。
ささやかでも美しく生きながら、そのように傷がついてもこころには鏡花がいる。
そうして鏡花のわたしがいれば、のびのびと美しいひとでいられる気がする。
なんてのんきなんでしょう。でも、そう思うのです。


明日は足をのばして、夏の大冒険Dayです。
しかしまあ、暑いね、ほんとにね…。