マークジェイコブスのかばん

或るとっても独特なファッションをする、おしゃれなおじいさんが言っていたのは
ファッションはエンタテインだってこと。
ひとつそのひとに今日の格好について聞くと、たっくさんの考えがでてくる。
気候や、どこに行き、なにをするか、誰と会うか、体の具合、なによりも気分。どうありたいか。
服を着るときに、自分がすこしでも後ろめたさのない格好をすることね。
ちょっと靴が合わないかな、とか… 気分より明るすぎるとか… そんなの、楽しくないでしょ?


わたしはたまに、かばんに対してちょっとだけ後ろめたい気持ちになる。たまにすこし派手に感じるのだ。
それで、このごろとてもあこがれているのがマークジェイコブス
そんなの数年前から流行ってるじゃん!って思うでしょう。でもそういう知識があこがれに変わったのは、
さきの金沢旅行でのことでした。


宿泊先のホテルのすぐそば、小さな一角に、なんだか外国みたいな路面店の集まる場所があった。
そこだけ(わたしのイメージの)パリみたいで、例えば表参道や銀座の「さあ!ブランド店ですよ!」っていう
強要されるようにせまるうっとうしさがまるでない。
その“パリ街”の入り口がマークジェイコブスのお店で、ひとめでぽおっとしてしまった。
こぢんまりしたお店。控えめで明るく、あっさりしているの。とてもすてき。
店構えのデザイン、ショーウインドーのファッション、置いてあるバッグの色あい。
毎日そこの前を通るたびに、行きも帰りもぽおっと眺めてた。
とくべつに、あれが欲しい!と物欲がわいたわけではなく、大人になったらお店に入ってみたいと思うような憧れ。


こういう気持ちはめずらしい。わたしはブランドへの執着はほとんどなく、古着でも新品でも気に入ればいい。
あえて言うなら、同じように憧れたのは高校生のころ…青山の裏手にあったアニエスベーのお店くらいだったと思う。
いまやいろいろなお店構えがあって、選べる。ふつうに居心地いい・悪いはあるけれども、
この種のどきどきは、なかなかあるもんじゃないんだな、と知る。
ときめきとは、真っ白な心にわきあがる興味のことです、と美容院で読んだ雑誌に載ってた(精神科医の言葉ね)
その未知の領域を知らずにいれば、ああマークジェイコブスね、ヴィトンのデザイナーだよね、で終わるけど
わあパリ街!とか、その旅先の街の雰囲気だとか、美しい人になりたいだとか、色んなことが混ざって
新しい種類のときめきが、マークジェイコブスに対して生まれたんだと思う。まったく個人的な巡り合せのなかで。


…というわけで、その場ではあこがれただけでお店に入っていない(そこがまたときめく)のだけども
こんなことを書いているのは、そのあとにいろいろに調べて、今日ついに!
マークジェイコブスのあっさりしたすてきなかばんを注文したから、でした!