地に足のつかぬ日々の終り

冷静でない。
いくらなんでも、つかれすぎている。
そのように自覚したのは、仕事仲間の私へのひとことで
「俺らの手の届かないところへ行ってしまった」という言葉でした。
わたしはぼんやりしている、どうも地上にいる気がしない。
まるで企画書の画面とわたししか、この世にはないみたいに…周囲が霞みがかる。
はじめはものすごい集中してやらないと、追いつかないからそうしてた。
そのうちに、生きている感じがしなくなった。
たぶんこういったことが続くと、うつ病になるんじゃないかと、思う。
エモーショナルになれない。こんなに恐ろしいことはないはずなのに、眠って起きても変わらない。


きょうも仕事で1時ごろ帰った。
まずいなあという気持ちと、どうでもいいやという気持ちがほぼ半々で
あまりにつかれたので、深夜営業のファミレスに寄ってハンバーグをたべた。
何もかんがえずに、居合わせた人びとを眺めているとすこし元気になった。
この人たちはどうして阿佐ヶ谷の深夜、ここにいるんだろう。
大きな音でずっとマンボを聴いているじいさん、一人で熱心に勉強してるきれいなアラフォー姉さん、
しあわせそうに話すヒッピーの50代カップル、図書館の単行本を大量に積み上げて読書してるおじさん。
こういう風景を拾うこともできなかった、このごろのわたしの目だ。


洗濯物を干していたから、取り込もうと外へ出たら
ふと夜空が、きわめて珍しい不思議なかたちでそこにあった。
満月、その周りの雲だ。段々畑そっくりの形をして、限りなく広く、たくさんの雲の畑が空に浮いていた。
その奥行き感たるや、もうひとつの世界のよう。
美しく異様な夜空に畏敬の念を感じ、そしてどこかで鈴がちりんと鳴り、心に何かが宿った。
生きるエネルギー。


洗濯物を畳んで、お風呂に入ろう。探偵ナイトスクープや、楽しみにしていた相棒9をみよう。
眠りにつくまでたらたらと泉鏡花を読もう。今日届いたフリーソウルのダイアナロス盤を聴いてもいい。
…そうだ、さっきの風景を写真に撮れるかな。
そう思って外に出ると、あの夜空は跡形もなく、完全にフラットな曇り空に変わってた。
運命なんてそんなもの。アハッ
そりゃ光がさす、月の光あれ、眼玉。