ゆく年/人生万歳!恵比寿ガーデンプレイス万歳!

あけましておめでとうございます!
今年の目標は、お能の勉強をすることと、心の透明度を上げること
そして混乱のなかでも、にごらないすべを身につけることです。
今年もよろしくお願いします♪


ゆく年くる年、きょうはゆく年編。
昨年の大晦日は休みをとり、映画を観にいきました。
恵比寿ガーデンシネマは1月いっぱいで休館となるそうで
その最後の映画に、ウッディアレンの新作がかかっています。
恵比寿ガーデンシネマが、ウッディの作品でしめくくることができて本当によかった。
わたしが高校生のころに開館したここは、ちょうど名画座の閉館ラッシュと入れ替わりに
ミニシアターブームの一翼を担った場所でした。
六本木のシネヴィヴァン、渋谷のシネマライズユーロスペース日比谷シャンテ、それにここ。
時代の流れとともに、映画館のラインナップもどんどん変化していったけれど
ひまな学生時代に、この5つの映画館へ行くことはわたしの習慣で、大事な時間でした。
その中で恵比寿ガーデンシネマは、いつもウッディの新作上映場所だったし
暖かく心にしっかり響く、そういう作品ラインナップという印象のハコで
私にとって、5館のなかでも一番ほっとする映画館でした。
映画館を出て、たいがい寒々しくがらんとしたガーデンプレイスをあるきながら
強めのビル風に吹かれて、映画のことをかんがえる。
気合の入っているときは、早めに行って写真美術館を見てから、
でも帰り道はやっぱり、映画のことをかんがえている。
鞄にはたくさんのチラシとパンフレットを抱えて、どこで珈琲を飲もうか考える。
ガーデンシネマがなくなったら、もう恵比寿にはあまり行かなくなるかもしれないな。


というわけで、「人生万歳!」というキャッチーな邦題で公開された
ウッディ、そしてガーデンシネマのファン感謝祭的なロードショーを見てきました。
ウッディ40本目にして最高傑作がでました!本当に本当、正真正銘。
ファンの熱いシビアな目で見て、これはウッディ映画総決算のすごい出来。
ウッディの近年の映画にたいする猛烈スマッシュが、この映画で結論にたどりついた。
感無量です。縁起でもないけどもしウッディが、この映画を最後に監督をやめたとしても
ファンのわたしはうん、よくやった、とうなずいて受け入れられる。
ウッディがずっと探していた答え、ずっと伝えたかった人生についての考えの結論、
ウッディ映画の決定版。やりきった、という感覚がファンとしてディレクターとして
本当に理解できる、とても痛快で、うれしくて笑い泣きしてしまうような映画でした。


原題は「whatever works」→何でもあり これじゃ人は来ませんけども
人生万歳!最高の邦題です。これで、なにか人生に万歳を見出したい人たちが観にきてくれる!
そしてきっと、ファーストカットで虚をつかれて巻き込まれ、
もう国宝級名人芸のコメディ進行と、洗練されまくった演出と、やりたい放題のストーリーに笑って笑って
ばかみたいなハッピーエンドにきっと、気がついたら背中を押されている。
万歳といいきれない日々に我慢しながら、このあいまいでねじれた日本にいる、
悩める行き詰ったみなさん、どんどん映画館に来てください。
そして、男らしさ女らしさに執着して、クネクネしたりマッチョに振舞おうとしたり
恋愛や生活を、条件や常識で選んだりすることが自分自身を不自由にしていないか
無意識に型にはまろうとする右にならえの意志があなたの快適さにつながるのかどうかを
正面きって見てほしい。
自身の快適さを求めて生きていくことは、それは、闘いじゃない。
そんなにはげしく、しんどいものじゃない。ごく単純で、かんたんなことで
それは、よろこびのはずじゃない?
快適じゃないのをがまんするほうが、どれだけしんどく、闘いを強いられているのかって!
ねえ。アッハッハ!とウッディは高笑いして飛んでいく。


だからわたしも、なんだか悩んだりぐったりするのがばかばかしくなった。
だからって正月明ければきつい仕事が待ってるし、状況は変わらない、だけど
何でもありだ。わたしの心は好きにすればいい。
そう思っている。より深く、しっかりと、すっきりと。


舞台はニューヨーク、だけどベートーヴェンの第九や運命ががんがんに流れる。
どう考えてもウッディ本人が演じるはずの主役のさえない老人も、役者にまかせている。
40本記念作、と銘打っているからには、ウッディもそれなりに特別な気持ちかもしれないけど
まああのひとはいつもと変わらず、すとーんと映画を作っただけなのだ。きっと。
外に出るともう日暮れで、やっぱり寒々しくがらんとしたガーデンプレイス
きょうは実家に帰るから、その前に阿佐ヶ谷の上島で2010年ラスト珈琲をキメよう。
実家に帰ったらちょうど第九が見られるように。


ガーデンシネマのファイナル、15日からはなつかしの上映映画集が始まります。
ウッディ作品はさすがに3本あり、「人生万歳!」とはしごして見ると最高なのは
やっぱり「さよなら、さよならハリウッド」!
他にも「スモーク」や「25時」「モーターサイクルダイアリーズ」なんかが再上映されるので
いやもう他にも再上映してほしいやついっぱいあるんだけど、ぜひ観とどけてあげてください。
ウッディ以外で「人生万歳!」とはしごおすすめの食べ合わせは、「スモーク」かな。
あと「トウキョウソナタ」もいいかな…人生万歳を後攻で♪
いやあでも、ウッディファンが全員心配しているのはきっと、
(ああ、ガーデンシネマなくなったらどこで新作やることになるんだろう)
ほんと、いい映画館でした。


明日は、翌日の元旦早々から映画館へ…くる年編のご報告。
立川でも見られるメジャー映画で、わたしが元旦から見たくなるようなものといえば、
お気に入りのあれです。右京さんがあなたの正義を問うやつです。見に行っちゃいました!うふふ。