買い物ドラマ・カワイイ喪の商品券の使い道

む、どうしよう。
この一週間ほど、わたしの頭を悩ませていたのが「全国共通百貨店商品券」。
先日亡くなった友人I君の親御さんから、ふと送られてきた御供養の品。
こんなに、いいのに…と恐縮しながら、この商品券というかたちで送られてきたものを
早くなにか形に換えるべきだわとかんがえた。
「御供養」と書かれた帯は、日常風景のなかで少しせつなく目立つ。
早く風景になじませたいと思った。


どう使うべきか、まず考えたのは本を買うこと。I君は熱狂的な本好きだったから。
けれど、その買った本の中身とI君とが結びつくのも、結びつかないのも違和感がある。
本がいまいち気に入らなかったりしたら、I君が「おもしろくなかったかなあ」としょんぼりするかも。
むむ、やめとこう。
つぎに考えたのは、毎日デパ地下でお昼ごはんを買い、屋上で食べる10日間をすごすこと。
手元になにも残らないなあ…でもすてきかも。
けれど、わたしの行きつけの松坂屋屋上がすっかりビアガーデンに様変わりしていてがっかり。。
しかも雨降り続きですっかり却下した。


どうしよう…いろいろと調べてみた。百貨店にはなにが売っているのか知るいい機会だった。
でもたとえばこの商品券を、化粧品などの消耗品や、流行の洋服に換えることはまったく考えられない。
化粧品も、服も、特別な一品ていう考えがわかない。一張羅とかそういう概念がないんだと自覚する。
生活に馴染むにしても、埋もれてしまいそうなのはどうかと思う。
気持ちよい使いかた、なにかないかな…


そんな日々のなか、きのうひさしぶりにロケに出た。
化粧品メーカーの仕事で、クライアントや代理店、タレント事務所の人たちが来て
スタッフ含めて総勢25名の大所帯での撮影だった。そのうちなんと20名が女性!わたしも含めて。
ちょっと休憩に入ると、とたんにきゃっきゃする現場で、まるで女子校のような雰囲気だった。
わたしはみんなを引率しなきゃいけない立場だから、いっしょにきゃっきゃするわけにいかないけど
みんな明るく楽しそうにニコニコしているので、わたしも演出しながらニコニコしてしまう。
あっちこっちで無邪気に、カワイイ!と声があがるのがおもしろくて笑っちゃう。
数少ない男性である技術スタッフは「あ、またカワイイ大会が始まってるんで…」と『カワイイ待ち』をして
納まるとささっと走って照明を直しにいったりする。そんな肩身の狭い男性陣の姿ももカワイイ(笑)


そういえば、カワイイってあんまり使ってない言葉かも、とふと思う。
猫や動物の動画を見てカワイイって言うけど、だいたいがすてきとかすごくいいとか言う。
カワイイって口にするとき、わたしはいつも発音がとろっとして、キーが高くなる。
「カワイイ」は海外でもスシやモッタイナイみたいに、そのまま変換されずに取り上げられている言葉だ。
撮影現場の女性たちの圧倒的なカワイイパワーはつい笑ってしまうし、メークアップとかいろんな手段で
カワイイを目指してすっごい工夫をしたり、技をみがいてるのは、みていてとても健康的だなあと思う。
美醜の欠点を隠すとか、男に媚びるためだけにメークをしたり服を選ぶ人は、ちょっと卑屈にみえる。
そんなことを男性スタッフが言っていて、なんだか透けてみえてしまうものなんだな、と思う。
メークやファッションは自分を素材にしたアートなんだから、楽しめばいいのにね。男女とわず。
とにかくまあカワイイ現場は、笑った。カワイイは笑いをともなう。わたしもカワイイを忘れずにね!と
自分で自分に言って、あ、そうだ!と思いついた。


んできょう、仕事帰り、閉店15分前に駆け込んだプランタン銀座。
喪の商品券を、店内を10分みたなかで一番カワイイと思ったもの、に換えようと決めたのだ。
I君はカワイイの概念とはかなり遠いところにいる男性だけど、だからこそ、そうしようと思った。
百貨店のなかでプランタンを選んだのも、カワイイ百貨店だからだ。
そしてとてもすてきな…カワイイかばんを選び、無事に喪の商品券を換えた。
スタンダードな形だけど質感がとてもきれい。控えめでヴィンテージ風のベージュピンク色で…カワイイ!
わたしのカワイイをみつけた感じがした。
真面目で照れ屋のI君が、カワイイ〜!カワイイ〜!と無邪気にきゃっきゃする女性たちに囲まれて
真っ赤になって照れ笑いする図が、プランタンを出たときにうれしく思い描けたからそれでOKだ。
喪の商品券ミッション、成功!


家に帰って冷静にみればみるほど、ああすてきなかばんだわ、今までの私にない感じ、と
カワイイ・ミッションで夢中だったわたしは改めて(カワイイ)とうきうきしているのでした。
だいじに使おう。