近況/ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ただいま受験勉強中!
一ヶ月後に試験があって、それまでに英語と時事問題を学ぶのだ。
映像業界で転職のために試験だなんて、考えてもいなかった。
それに、自分がその求人をみて、本気で英語を勉強しなきゃと思うなんて。


仕事をしながら勉強するのは、こんなに大変なのかとおどろいてしまうほど時間がとれない。
朝夜の通勤時間とランチタイム、それから帰宅後。
3日坊主とは、3日もすれば疲れてしまうからなのかも。はりきりすぎて、4日めからはげしく眠くなる。
本も映画もおあずけで一ヶ月もつわけがないし、友人たちとおしゃべり、遊びの夏。受験まぎわに旅にでることも決まってる。
仕事は忙しくなり、通勤時間も眠ってしまう。。やれるだけやろう、と決めたら気が楽になった。
だけど、すっごく楽しい。はじめは右も左も忘れてこわがってばかりだったけれど、ああそうだと思い出してきたら
毎日、英文をながめるのがとても楽しみになってきた。
せっかくだから、試験に落ちてもTOEICを受けてみようかな、とか
海外に住む友人たちのだんなさんと英語で話せるようになりたいから、発音も勉強したい。
わたしの仕事に英語はあまり関係ないけど、スコセッシやウッディにインタビューの機会があっても今のままでは無理!
あんなに英語の映画をなんども見ていても、いかに自分がそれを聞き流していたかとおどろく。


さて、英語づけの中でふと読み終えた本のお話。三週間ほどかけてゆっくり読んだ。
ポールオースターがラジオ番組をやったときに、リスナーから募集した「わたしの物語」を
179人分集めて編纂した「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」。
普通の人々のもつ物語を集めたら、アメリカの姿が浮かび上がってくるんじゃないかという主旨。
シンクロニシティや、失くした物が意外な形で姿を表すとか、偶然とは思えないご縁…
映画「クラッシュ」のような、ささやかで驚くような奇跡のお話が多い。
そうでないものもある、そういうお話は、すごく印象的な光景がひろがる美しい物語。
戦争や、人種差別、移民の暮らし、途方にくれる広い土。たくさんの人々のスナップ写真の集まりのように
アメリカ合衆国のコラージュが出来上がっていく。
きっとすべて読み終えたら(ああ、アメリカだった)とほおっとするのだろうと思っていた。
その通り、けれど実際のところ、最後まで読んだ人は一人残らず、今すぐラジオをつけるにちがいない。
わたしがそうしたように。


ラジオに思い出のない人なんているのかな。
わたしは小学生のころに、昼間にFENを聞いていたことは以前書いたけれど
もうすこし高学年になると、自発的に夜中にこっそりラジオを聴いていた。
とても記憶に強いのは佐野元春のラジオで、AM放送だった。局も番組名もわすれた。
ヤングブラッズが流れて、モノラルで音がわるくそれなのにとてもキラキラした、あの感じは一生忘れない。
世界に色がついたような感覚。わたしは一人じゃなくて、広い世界のたくさんの街角に誰かがいる、という確信。
レコード、CD、いい音のヤングブラッズも、それにその後ライブで生で聴いたときも、ほんとうに嬉しいと感じた。
けれどあのときの、モノラルの、電波の不安定なノイズの介入も含めたあの音で今もう一度聴くことができたら
涙が出るほどしあわせだろうと思う。


この本はラジオと同じように、誰かの話すのを(或いは歌を)日常のなかでふと聞きとめたような本。
アメリカを感じるだけでなくそのもっと奥にある、普遍的な…世界の日々の回転するさまが浮き上がってくる。
日常、その回転の美しさを見出すことのできる本です。ぜひ読んでほしいです。

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ナショナル・ストーリー・プロジェクト

ついでに、わたしの思うアメリカのイメージ(本を読んでひさびさに見直した…やっぱり素晴らしい写真集!)
Robert Frank: The Americans

Robert Frank: The Americans

ついでのついでに佐野元春!!!